研究課題/領域番号 |
16K03919
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
木村 弘 広島修道大学, 商学部, 准教授 (50336070)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サプライヤー / 生産現場 / ものづくり / 中小企業 / 経営戦略 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,前年度に調査をまとめた論文(著書)「サプライヤーの協力体制の刷新」をベースにした,国内学会全国大会での報告を行った。報告したのは,組織学会全国大会(於:滋賀大学,2017年6月)である。報告テーマは「サプライヤー関係における企業成長と信頼形成‐AAT: A-ABC活動を中心にして‐」である。報告では,自動車メーカーのマツダとそれを取り巻く地場のティアワン・サプライヤーによる協調的な部品開発や改善提案等の取り組み内容を取り上げた。国内のみならずタイにおいても,地場の取引関係をもとにした生産改善の取り組みがなされている。マツダが提示する「モノ造り革新」という設計思想や生産への考え方が社内外で共有されていることを報告した。また,生産改善について,国内のJ-ABC活動がタイでA-ABC活動として展開されていること,これらには基軸があり,これらがティアワン・サプライヤーまで浸透していることを報告した。 次に,部品産業に見られる集積型産業の研究の報告を行った。報告したのは,日本経営診断学会九州部会(於:大分県産業創造機構,2018年3月)である。報告テーマは「ものづくり中小企業の経営比較」である。考察は,化粧筆を扱う2社の中小企業の事例から行った。2社ともに,大手化粧品メーカーとのOEM生産取引や,海外での事業活動を活発に展開している。自動車部品サプライヤーにおいても,複数の自動車メーカーとの取引を模索したり,海外メーカーとの取引開拓,海外生産の強化など,同様な問題もあることから,今回の研究に取り組んだ。自動車でも,企業ごとにこだわったものづくりがなされており,同様に化粧筆でも,伝統工芸品の高度な技術と品質にこだわったものづくりが展開されていた。比較の結果,保有する高度な技術に基づいているが,その先の価値創造は文化重視とトレンド重視の違いが見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は,上記の論文をもとにした学会報告(①)と,新規に取り組んできた,ものづくり中小企業の研究の学会報告(②)を行った(現在,ものづくり企業の研究論文は査読雑誌へ投稿中である)。 ①については,当初の計画で「事例企業の調査,国内学会で報告」という最低限の目標はクリアしている。遅れているのは,平成30年に著書や,学術論文としてまとめていく概念整理,事例考察の枠組み等のまとめである。ある程度のデータは蓄積しているので,アウトプットに向けて積極的に取り組んでいく。 ②については,おおむね順調に進んでいる。他産業の研究は今後,自動車サプライヤーの研究で得られた知見を一般化しやすくするために進めている。平成29年度は,九州部会での報告だったので,平成30年度では全国大会での報告を控えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在の申請テーマは「事例研究」であるが,将来的にさらに研究を発展させて「定量的」に経営現象をとらえていく方向で考えている。これまで蓄積のある,自動車部品サプライヤーの事例研究をもとにして,「戦略策定と生産現場の整合性」について明確な結論を提示したい。これに,他産業の「ものづくり企業の事例研究」を加味していく。自動車部品サプライヤーの考察で得られた知見を,他産業のケースを前もって考察しておくことで,一般化の作業をスムースに展開できるようにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記のとおり,自動車部品サプライヤーの研究を一般化するため,他産業の研究を推進するために,平成29年度末の自動車部品関係の海外調査を実施しなかった。そのため,海外渡航費用(マツダの海外工場のあるタイかメキシコ)の50万円弱の経費の執行をしなかったことが影響している。 今後の使用計画として,上記の海外調査を含め,国内のものづくり企業へのヒアリングのための旅費,その他の書籍や資料代等に執行予定である。
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