研究課題/領域番号 |
16K03921
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
中原 裕美子 九州産業大学, 経済学部, 教授 (40432843)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 台湾 / 受託 / ICT産業 / ODM / EMS |
研究実績の概要 |
今年度は、主に、台湾最大のEMSである鴻海精密工業の新たな展開について研究を行った。その結果、(1)インドへの投資、(2)垂直統合モデル(3)自社ブランドのIoT家電への進出という新たな展開を行っていることが明らかになった。 まず(1)であるが、台湾政府は2016年、「新南向政策」を掲げ、中国一辺倒の投資から脱し、インド等への投資を推奨している。鴻海もインドへの投資に動き、すでに2017年に100万台のスマートフォンをインドで生産したと見られ、さらに2020年までには50億米ドルを投じて工場や研究施設を設ける計画だという。 次に(2)である。鴻海はこれまで受託生産に徹してきたが、2016年にシャープを買収し、2017年には東芝のメモリ事業の買収に動いた。それは、今後の成長に必要なブランド力や製品開発の技術を強化するためと見られる。最大のライバルと見なしている韓国サムスン電子のように、開発から販売まで一貫して行う垂直統合の経営モデルを目指しているようである。 次に(3)であるが、鴻海は2015年、初めてIoT家電の分野において自社ブランドを立ち上げた。台湾のトップデザイナー謝栄雅氏が代表を務める奇想創造と共同で出資を行い、IOT家電メーカー富奇想SquareXを設立したのである。人口が都市に集中し居住空間のコンパクト化が世界規模で進んでいるというトレンドを見据え、壁掛け家電を開発している。受託生産を行ってきた企業が自社ブランドを始めることは、顧客が競合相手となってしまうジレンマがある。従って、受託生産事業と自社ブランド事業を同時に行ってどちらも成功することは、非常に困難だと言われる。しかし、IoT家電は新しい分野であり、競合相手も少なく、鴻海もその受託生産を行っていないため、顧客が競合相手になることもないことから、自社ブランド事業に参入するには好ましい分野であると言えるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、主に、台湾最大のEMSである鴻海精密工業の新たな展開について研究を行い、その成果を、論文にまとめ刊行することができた。そしてそれを、2回の国際カンファレンスにおいて、英語で発表を行うことができた。 また、台湾のIT企業群の脱皮、という内容の論考を、分担執筆の著書の1章として刊行することができた。
また、まだ論文としての刊行には至っていないが、台湾ODM企業の新しい展開として、ソフトウェア受託産業への展開の調査と、中東欧への展開を調査し、これら調査において、新しい知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、台湾ODM企業のソフトウェア受託産業への展開と、地理的な新たな展開を研究し、論文として刊行することを目標としたい。 そのために、2017年度に行った、台湾ODM企業の中国におけるソフトウェア受託産業への展開の調査と、中東欧への展開を調査で得た調査結果を補完するために、ソフトウェア受託産業を展開している企業へのさらなるヒアリングと、台湾企業の地理的な新しい展開の別事例として、インド・バンガロールへの進出を調査したいと考える。 また、これまでの研究成果を、2018年9月にワルシャワで開催されるThe European Association for Comparative Economic Studiesの年次大会における、ヨーロッパとアジアの新興国企業の比較研究というセッションにおいて発表し、多様な研究者からの意見を伺う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定していた研究発表は全て日本で行うことになり、またそれらの旅費は、発表した国際学会の主催者である京都大学経済研究所から支出頂いたため、国際学会での発表のための旅費が不要となったことによる。
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