研究課題/領域番号 |
16K03921
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
中原 裕美子 九州産業大学, 経済学部, 教授 (40432843)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 台湾情報機器受託企業 / グローバル生産ネットワーク / 米中貿易摩擦 |
研究実績の概要 |
昨年度は台湾情報機器受託企業の中の個別企業の動向に焦点を当てたが、今年度はより大局的な、国際経済の変化の中の台湾情報機器受託企業の戦略転換と、それに伴うグローバル生産ネットワークの再編に焦点を当てた。 その概要は以下の通りである。 台湾は、1970、80年代の輸出指向工業化や、1990年代の脱垂直統合の流れの中で、世界市場とつながることで成長してきた。しかし21世紀に入り、以下のような様々な要因により、台湾企業は、「低コストの中国で大量生産」という、これまでのビジネスモデルからの脱却を迫られている。 まず、中国の経済発展に伴う人件費増大などのコスト上昇である。中国の、台湾企業が多く生産拠点を構える都市における最低賃金の推移を見ると、2010年代に入ってからだけでも、2倍またはそれ近く増加している。次に、中国の環境意識の高まりによる環境規制の強化である。その規制の中にはかなり厳格なものもあり、これも、中国における台湾企業のオペレーションを厳しくしている。さらに、世界で顕在化してきた自国第一主義および反自由貿易の波の中である。21世紀に入り、アメリカのトランプ大統領の就任もあり、自国第一主義、ひいては保護貿易とも言える波が到来している。 このような状況の中で、これまで中国に大きく依存してきた台湾情報機器受託企業は、さまざまな戦略変更を行っている。台湾への回帰投資、インドや他国への投資、IoTの自社ブランドや医療機器関連産業への展開である。 この台湾企業の柔軟な戦略変更により、情報機器のグローバル生産ネットワークが地理的に拡張・再編されている。その事例としては、中国とベトナム北部を結ぶサプライチェーンが新たに形成されていること、インドも生産ネットワークに加わりつつあること、等である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は個別企業の動向に焦点を当てたが、今年度はより大局的な、国際経済の変化の中の台湾情報機器受託企業の戦略転換と、それに伴うグローバル生産ネットワークの再編に焦点を当て、その成果をシンポジウムおよび国際カンファレンスで発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本科研はおおむね順調に進展してきたものの、以下の理由で、研究期間を1年延長することとする。 本科研のテーマは、台湾情報機器受託企業の新展開とグローバル生産ネットワークの変容に関する研究であるが、2018年に、台湾企業が輸出先として大きく依存するアメリカと、生産拠点として大きく依存する中国の間で、米中貿易摩擦という大きな事件が起こり、台湾情報機器受託企業企業の中で、中国から撤退して台湾に回帰投資を行ったり、インド等他国に投資する動きが急速に出始めた。 この急速な新しい展開の結果を、暫定的であるにせよ見るためには、やはり少なくともあと1年はかかると思われる。しかし、この新展開の結果を含めずして台湾情報機器受託企業の新展開とグローバル生産ネットワークの再編を論じることは片手落ちになってしまう。そのため、本科研は、この突発的事項に対応するため、期間を延長してあと1年研究を行う。 今後は、米中貿易摩擦の勃発に伴う、台湾受託企業の新展開と、それによるグローバル生産ネットワークの再編を検討する。米中貿易摩擦の勃発に伴い、台湾企業の中に、先述の通り、中国から撤退して台湾に回帰投資を行ったりインド等他国に投資する動きが急速に出始めたため、グローバル生産ネットワークも大きな再編を迎えることとなった。それについて詳細を調査し、検討を行う。 そして、その研究成果を、今年12月頃に、何らかの国際カンファレンスで発表することを目標とする(さしあたり、京都大学経済研究所主催の国際カンファレンスなどを予定している)。
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研のテーマは、「台湾情報機器受託企業の新展開とグローバル生産ネットワークの変容に関する研究」であるが、2018年に、台湾企業が輸出先として大きく依存するアメリカと、生産拠点として大きく依存する中国の間で、米中貿易摩擦という大きな事件が起こり、台湾企業の中で、中国から撤退して台湾に回帰投資を行ったりインド等他国に投資する動きが急速に出始めた。この新展開の結果を、暫定的であるにせよ見るためにはやはり少なくともあと1年はかかると思われ、またこの新展開の結果を含めずして台湾受託企業の新展開とグローバル生産ネットワークの再編を論じることは片手落ちになってしまうことから、この突発的事項に対応するため、本科研を延長してあと1年研究を行う。
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