当初の研究期間より1年間の期間延長を行い、追加で研究を行った2019年度は、台湾情報機器受託企業の新たな展開として、米中貿易摩擦という環境変化の中での、台湾情報機器受託企業の戦略変化を中心とした研究を行った。 米中貿易摩擦の勃発を受けて、台湾企業は、以下のような行動を取っているようである。台湾への回帰投資、ベトナム、フィリピン、インドネシア、インド等の東南アジア・南アジアへの投資による柔軟な生産拠点の再編、そしてIoTの自社ブランドの展開、医療機器関連産業といった新しい事業分野への展開である。 また、この台湾企業の柔軟な生産拠点の再編により、中国とベトナム北部を結ぶ陸路のサプライチェーンが新たに形成され、それによりベトナム北部が生産拠点として注目され、ベトナムのGDPや輸出が伸長している。また、かつて中国が生産拠点として台頭した後に一度は没落したフィリピンのスービック工業団地が、台湾企業が生産拠点を復活させたことで再び脚光を浴びるなど、アジアにおけるサプライチェーンの再編や、東南アジアの工業地域の再振興をもたらしている。さらに、台湾への回帰投資は、台湾の工業区の再振興も促している。 このように、米中貿易摩擦にも一部起因する台湾情報機器受託企業の生産拠点再編は、アジアにおける情報機器の生産ネットワークを変化させている。
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