本研究の目的は、製品アーキテクチャの「すり合わせ」から「モジュール化」への変化を定量的に実証研究することである。 1)液晶の製品アーキテクチャの変化に関する定量的実証分析 (中田行彦):グーグルは、モジュール化スマートフォンを開発していたが、その後断念した。この事例を定量的に分析した。本事例では、今まで未使用の非接触型高速インターフェース(M-PHY)と電磁着脱の2つの新技術に挑戦した。この非常に高い技術レベルへの挑戦が失敗原因となった。DSMを用いて定量分析すると、M-PHYを採用した場合、不採用の場合と比較し、「情報の流れ」の数は増加し複雑性が増加している。この失敗事例から、製品アーキテクチャの方向を決める要因として、「デザイン・ルールの難易度」があることを明らかにした。また、液晶に対する破壊的イノベーションである有機ELについても調査し報告した。 2)自動車の製品アーキテクチャの変化に関する定量的実証分析(中田行彦、柴田友厚):自動車産業の「モジュール化戦略」のアプローチの違いを、VWと日産の事例で分析した。VWは、デザイン・ルールという形式知を重視し徹底する形式知志向で、西洋型の「組織的知識創造」と言える。日産は、「モジュール化」と、現場の暗黙知を重視した「パーツ・コモディティ」の2層を「すり合わせ」で統合した戦略で、日本型の「組織的知識創造」である。 3)製品アーキテクチャと産業構造の関係分析と提言(中田行彦)上記の事例研究を踏まえ、製品アーキテクチャの決定要因を分析した。、中田は、「モジュール型」の方向に動く要因として、複雑性が大きい、モジュール化で競争できる、デザイン・ルールの企画能力が高い、持続的技術である、等を提案し昨年報告した。今年度、「デザイン・ルールの難易度」があることを明らかにした。これらの要因が産業間の関連、つまり産業構造を決める。
|