本研究の目的は、Managerial Innovation(マネジメント革新)を通じた技術革新能力の形成・向上メカニズムを明らかにすることにある。具体的には、企業のマネジメント手法と企業内の技術力構築や企業パフォーマンスとの関係を実証的に分析する。研究対象とするアセアン地場企業は技術力向上に活用できる内部リソースが極めて限定されているため、形成取引先企業等が持つ外部リソースと内部リソースとを効果的に結合させることで、技術革新能力を向上させることができると考えられる。本研究では、マネジメント革新を、そのための仕組み作りのための試みと解釈し、①マネジメント革新を可能にする企業の基礎能力と②マネジメント革新に求められる基礎能力構築に、取引先との関係が与える影響を在アセアン企業のデータを用いて実証的に明らかにすることを試みてきた。本研究の分析対象と成り得るマネジメント手法には、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)といった日本的な品質管理手法から、部門横断的な新製品開発チームといった企業内組織、ICT(情報通信技術)を含む設備投資を伴うシステム構築までが含まれる。2019年度は、①国際学会において、2018年度に行った部門横断的チームとManagerial Innovationとの関係に関する分析をベースに研究発表を行い、研究の改善を図ることを試みた。さらに、②在タイ企業へのアンケート調査から構築されたデータを用いて、回答企業の顧客のICT投資と回答企業によるICT機器・人材投資投資との関係、回答企業によるICT機器・人材投資投資と情報利用との関係をSEM(構造方程式モデリング)により分析を行った。
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