本研究は、顧客サービスの戦略的有効性について、(1)サービス・マーケティング研究の対象を再検討することによって、また、(2)サービス・プロセスを定性的に捉えた検討を進めることによって、企業活動の成果との関係を明らかにすることを目的とする。 研究期間のなかで、分析視角の理論的精緻化を進め、サービス・マーケティング研究の新たな視点として採り上げ、研究論文にまとめた。また、サービスのプロセスへの注目は、顧客のアクティビティの中で機能するサービスの展開が重要である。とりわけ、サービス従事者がこのことを理解して実践することが求められ、それがどのように推進されているのかを調査する必要があった。そこで、サービス従事者を限定して断続的に行動観察するなどして、調査を進めることになった。 当初より予定していた運輸業、小売業のサービス従事者への調査を実施することで、直接的な相互作用は顧客の意志や能力に委ねられ、そのなかで機能することが明らかになった。このことは、企業による管理の外の部分であり、外の理解抜きに適切なサービスを特定することはできない。つまり「ふれあい」や傾聴は、顧客理解に留まらない、動態的な適応を可能にする、サービスの提供に事欠かないといえる。また、ここからプロセスが生まれ、適時性を重視した対話の促進が可能になるのであり、安定したリレーションシップに到達する。ここに、サービスの成果を確認することができる。 これらの検討から、プロセス全体がもたらす顧客サービスの戦略的有効性を新たに確認することができた。今後理論的・実践的な示唆に富んだ研究の推進が可能になり、新たなマーケティング戦略の構築に必要な知見が獲得できる。
|