研究課題/領域番号 |
16K03928
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
黒川 久幸 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (50282885)
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研究分担者 |
林 克彦 流通経済大学, 流通情報学部, 教授 (20258164)
上村 聖 城西大学, 経営学部, 准教授 (00760604)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生産性 / 物流KPI / 物流サービス / アンケート調査 / 統計的分析 |
研究実績の概要 |
(1)企業レベルの生産性及びその決定要因の統計的分析 帝国データバンクのデータベースから抽出した997社に対して企業レベルでの生産性に影響を与えると思われる要因に関するアンケート調査を実施し、昨年度に241社(24.2%)から回答を得ることが出来た。この結果を踏まえて、帝国データバンクの企業財務データベース「COSMOS」から損益計算書、原価明細のデータを取得できた135社を対象に、労働生産性及び経常利益率と、アンケート回答との統計的な関連を分析した。その結果、「コスト・原価管理」や「提案営業」など、多くの企業が収益性改善のために取り組んでいる事項が、労働生産性と負の関係にあること、また、労働生産性改善のために国が推進している事項の一つである「荷主連携」について、労働生産性と正の関係にないことが明らかとなり、この成果を日本物流学会全国大会で発表した。 (2)現場レベルの生産性及びその決定要因の統計的分析 現場レベルの生産性に影響を及ぼす決定要因を明らかにするために、昨年度に引き続きアンケート調査を実施した。そして、ピッキング作業に関する生産性に関わるKPIデータとアンケート調査結果との分析から、人時生産性に影響を与える作業者の意識や行動特性について統計的な関連を分析した。その結果、作業を見通せる知識・想像力、作業スピードや判断を早くしようとする意識、およびやりにくい作業は解決しようとする姿勢などが、生産性に影響していることが明らかとなり、この成果を日本物流学会全国大会で発表した。 また、管理方法が現場レベルの生産性に与える影響を調査するために、同種の商品を取り扱う複数拠点を有する物流企業の選定作業を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
企業レベルの労働生産性や経常利益率とアンケート調査結果に関する統計的分析を予定どおりに実施することができた。また、現場レベルの生産性とその決定要因に関する分析を行うために、オペレーションの生産性に関するKPIデータの収集及びアンケート調査を引き続き実施することができた。そして、入手したKPIデータとアンケート調査結果から生産性に影響を及ぼす決定要因について統計的な分析を予定どおり実施することができた。 以上のように、当初の計画にしたがって順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究成果を踏まえて、引き続き生産性関連データの取得やアンケート調査を実施するとともに、生産性と決定要因に関する統計的な分析を実施する。そして、研究期間全体の成果をとりまとめる。具体的には企業レベルと現場レベルに分けて、次の研究を実施する。 (1)企業レベルの生産性に影響を与える決定要因のまとめ 企業レベルでの生産性や経営効率と、これらに影響を与える要因(例えば、事業者の業種・規模、荷主の種類・荷主との関係性、人材状況等)との分析を行った結果、労働生産性改善のために国が推進している事項の一つである「荷主連携」について、労働生産性と正の関係にないことが明らかとなった。そこで、この点について、労働生産性を改善するために有効な「荷主連携」の詳細を明らかにするための分析を行い、研究期間全体の成果をとりまとめる。 (2)現場レベルの生産性に影響を与える決定要因のまとめ 平成29年度に引き続きオペレーションの生産性に関するKPIデータの収集及びアンケート調査を実施していくとともに、生産性に影響を及ぼす決定要因について分析を行う。特に、分析では決定要因間の関係性についても着目し、生産性に影響を与える要因構造を明らかにする。また、物流センターによる生産性の相違を明らかにするために作業者だけでなく管理方法の影響を明らかにするためのアンケート調査を行い、管理面からの生産性に与える影響についても分析を進めることができるように、引き続き同種の商品を取り扱う複数拠点を有する物流企業の選定作業を実施する。そして、研究期間全体の成果をとりまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由は、企業レベルの研究において、想定以上のアンケート調査の回答があり、帝国データバンクの企業財務データベースを購入するための予算に不足が生じたためである。 このため次年度の予算を一部使用して企業財務データベースを購入し、分析を実施することとした。
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