オフショア化されたコールサービスセンターへ問い合わせが繋がった日本人顧客は、応対者によるサービスに対してどのように感じるのか?この構成要素および測定尺度の開発を目指して研究を行った。サービスマーケティング分野における先行研究が見出したには、オフショア化はサービスに対する顧客の知覚に負の影響をもたらす。しかし、先行研究のデータは主に米国の顧客に関するものであり、日本人顧客を対象とした研究はない。本研究では、こうしたギャップを埋めるため、先行研究のレビューから開始し、本研究の対象であるコールサービスセンターの実態調査および日本人顧客へインタビューやサーベイなどを行った。そうして収集したデータを定性的比較分析にかけ、「オフショア化されたコールサービスセンターの応対者によって提供される電話サービスに対する日本人顧客の心情」の測定尺度を作る上での構成要素を探索した。本研究が発見したことは、日本人顧客は応対者に関して自身との類似性「日本人らしさ(Japanese-ness)」を期待し、これが日本人顧客の心情の重要な構成要素になっているということであった。また、この「Japanese-ness」の判断基準は2つの両極端なタイプ、すなわち緩い基準と厳しい基準に分類されることも分かった。さらには、実際の判断基準がどの位置になるかは、日本人顧客が有する「距離に対する注意」という要因によって調整されていることも分かった。とりわけ、問い合わせ内容が「高度な(専門的な)内容」である場合には、日本人顧客はこの「距離に対する注意」が弱くなることで応対者によるサービスを厳しい目で評価する傾向がある。一方、問い合わせ内容が「低度な(一般的な)内容」である場合には、日本人顧客は「距離に対する注意」が強くなる、すなわち相手が「外国人」であることを踏まえて、サービスの提供が円滑に進むよう気をつかう傾向がみられた。
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