本研究課題「消費者行動研究の集計化に関する考察-消費者主導の市場形成に着目して-」の最終年度は、主として、成果発表と成果発表を通じた研究成果のさらなる精緻化が行われた。まず、5月には、第68回日本商業学会全国大会において、「日本のポップカルチャー・イベントの形成・発展プロセスに関する考察」として研究発表を行い、集計水準という視点から過去の消費者行動研究を整理することによって、集計水準の低い個別消費者行動研究から集計水準の高い市場形成論までを体系的に論じることのできる消費者行動研究の展開方法を提案した後、このフレームワークがジャパニーズ・ポップカルチャー・イベントの発展プロセスの説明や戦略提案にいかに展開されうるのかを論じた。具体的には、市場形成モデル、市場変容モデル、市場連結モデルの3つの発展プロセスが想定でき、それぞれのモデルがいかなる場合に有効で、いかなるSTPおよびマーケティング・ミックスが必要であるのかを論じた。 次に9月には、10th Midterm Conference of the European Sociological Associationにて、“The Process of Development and the Evolution of Japanese Pop Culture Events: Case of the World Cosplay Summit”というタイトルで研究発表を行い、個別のジャパニーズ・ポップカルチャー・イベントであるワールドコスプレサミットにフォーカスし、本研究のフレームワークが「消費者主導の市場形成」をいかに説明でき、戦略提案まで行えるのかを論じた。特に戦略提案においては、消費者行動の集計化のパターンが戦略のパターンを規定する点を論じたことは本研究の大きな成果である。
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