研究課題/領域番号 |
16K03945
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
小嶌 正稔 東洋大学, 経営学部, 教授 (40215257)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 石油流通 / 独立系石油販売業者 / プライベートブランド / コ・ブランド / 系列 / フランチャイズ / 中小石油販売業者 |
研究実績の概要 |
平成28年度は独立系石油販売業者の生成と成長プロセスを、戦後の石油販売業の法的整備から、事実上系列化を法的に裏付けた揮発油販売業法の施行、供給元証明制度の廃止までの期間を対象に調査・研究した。 独立系業者の生成に関する研究として、独立系販売業者を中心とした中央石油販売事業協同組合等の各種資料に基づき、独立系の生成過程を時系列で把握した。特に同組合がまとめている歴史的展開に関する資料を精査すると共に、独立系を牽引してきた主要メンバーの発展過程についてヒアリングを行った。また同組合の会長・事務局長とヒアリングを5回行った。このヒアリングでは、歴史的事項のみならず、独立業者の現状・役割・課題・今後の展開を含めて行った。 次に欧米における独立系についての文献調査を、アメリカ、欧州を対象に行った。この調査により系列を前提とした石油流通が、この15年間において製油所・販売拠点の再編が急速に進むことによって、系列の意味が大きく変化していることが明らかになった。 さらに異業種との業態開発において、石油販売を中心とした業態開発が業態高度化の競争に追随することができなくなることによって、精製・元売のチャネル構造が大きく変動したことが分かった。この変動は統合石油会社の小売からの撤退を招き、同時に本研究の課題である独立系石油販売業者の活動範囲の拡大と異業種とのコ・ブランド化の進展を招いていることを確認した。その上で、独立系のブランドの展開事例として、石油販売事業を中心に新業態開発を行っている事例の事例研究を行った。コ・ブランドについては、論文にまとめ公表した。 また石油精製・元売の合併が系列にどのような影響を与えるかについて、中小販売業者の視点、独立系販売業者の視点から、米国との比較を含めて行った。この部分についても、系列の慣性の視点から論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年の研究実施計画の中で、独立系石油販売業者の生成と発展過程については、生成プロセスと初期の成長プロセスについて、文献調査・ヒアリング調査を終了した。一部の期間におけるデータの欠落はあるものの、初年度はきわめて順調に進捗している。一方、数的な把握については、法的に全SSの系列化を前提とし、独立系が存在しないとされてきた期間については数的に把握できない期間もあり、この期間の推定を論理的に行う必要ための追加資料を収集する必要が残った。 系列店の独立要因については、独立系の組合事務局のヒアリングを行った後に、全数調査資料の作成(案)を行うこととしていたが、ヒアリングについては終了し、計画通り調査票案の作成まで終了している。 また独立系の対極である系列の意識については、10県の石油商業組合の事務局において系列意識を元売り再編に関連づけてヒアリング調査を行い、系列意識にある系列の慣性について調査・研究した。この意識は脱系列・独立系への転換への意識を形成するものあり、この考察は研究の必要性を裏付けるものとなった。 計画段階で予定していなかった成果としては、熊本地震に対する石油流通の実態調査を通して、緊急時に即応できる石油製品の供給体制において独立系の果たす役割の大きさを確認できた。これは本研究の目的の中で取り組むべき社会的意義としてあげたものであるが、これが現実の石油流通において検証できたことは独立系(系列外)流通が災害時において冗長性の観点からも重要であることを示すことができた。 以上のことから初年度の進捗状況はほぼ計画通りであり、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、計画通り、供給元証明書制度の廃止による非系列から独立系への転換、新業態開発について、元売系列に対するPBとして、商社系PB、JA全農系統、イオン、ジョイフル本田などの流通系と、独立型PBの4分類で把握するとともに、業態別についてもこの分類ごとに調査する。 次に前年度に作成した独立系の意識調査を実施し、独立系への転籍意識、販売量、仕入ルート、業態開発まで量的データとともに非数量的データを収集する。JA全農の系統については、農協流通研究所の協力の下、JA全農系統関係の数的データを活用して分析するとともに、商社系については、全国販売店会などを活用してヒアリングを行い、可能であれば時系列で数的に把握する。 その上で震災などの緊急時に精製・元売系列以外の販売業者が果たした役割を熊本地震における石油物流等の検証によって,独立系が危機管理上の冗長性を担保していることについても検証する。 さらに28年度に実施する予定であった欧州における独立系の業態開発と無人SSの実態調査を実施し、今後の石油系列業者の業態開発の比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度において、ドイツ・オーストリアにおいて独立系及び業態開発実態調査を行う計画であったが、熊本地震が発生し、熊本において緊急時の石油流通調査を行う必要が生じ、当初の海外実態調査が実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年において、ドイツ・オーストリアか、もしくはドイツ、オランダ、スウェーデンにおいて独立系および業態開発実態調査を行う計画である。
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