研究課題/領域番号 |
16K03947
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
伴 正隆 日本大学, 経済学部, 准教授 (50507754)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域ブランド / ブランドイメージ / 競争構造 |
研究実績の概要 |
本年度の計画は既存研究のサーベイとデータ収集、さらに基礎分析である。既存研究のサーベイは、(a)観光地間の競合関係に関する既存研究、(b)競合データを得るための質問紙を構成するために用いる地域イメージの測定研究という2つの観点から実施した。(a)についてはPike (2009,Tourism Management) が代表的なものであり、(b)については様々な観光地域イメージ測定の調査結果を収集し、質問紙の構成に援用した。 質問紙では9つの温泉地について、各温泉地に対して何かしらのイメージを持っているか否かで回答者をスクリーニングしたうえで、各地域のイメージを5段階のリッカート尺度で測定、地域間の類似性の有無と、各地域に対する選好度を測定した。さらに回答者居住地の郵便番号と観光旅行模擬選択の質問項目を設定することで、イメージ項目と類似性、選好度、模擬選択、地域間距離という複数の競合データを同一回答者から得た。 このデータの基礎分析としては、イメージ項目データに対して主成分分析を行い、温泉地イメージの第一主成分として①都心からの利用しやすさやアクセシビリティ、第二主成分として旅行代金や治安などの②観光地の基本評価項目、第三主成分として③温泉地としての魅力が抽出され、那須・修善寺や湯河原・鬼怒川、熱海・伊東などの競合関係が観測された。一方で、類似性データに対して多次元尺度構成法を適用した結果として、公共交通機関の便と、温泉自体を楽しめるかという2つの評価軸が抽出され、熱海・伊東、草津・伊香保、箱根・修善寺が競合していることとなり、イメージ項目と類似性という同じような性質の競合データであっても、異なる競合結果が導きだされることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、既存研究のサーベイと質問紙調査によるデータ収集、そして基礎分析を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
次なる研究目標は複数の競合データを用いた競争構造モデルの開発である。 質問紙調査は紙上で尋ねたことしか分からないため、例えばブランドイメージについて分析者が事前に具体的なイメージ要素の項目を設定した場合には、その取り上げられた項目しか回答を得ることができない。一方類似性は、具体性は低いが回答者の感覚として分析対象に関する全体的なイメージ評価を示している。 これら競合データの特性を考慮した統合モデルの構築を考えると、個々の地域イメージ要素で捉えきれないものを全体的なイメージで補完する形が想定され、つまり地域イメージ要素による競争構造モデルの背後に地域間類似性が設定されるモデルを構築する。これには例えばベイズ因子分析の因子得点を地域間類似性データに回帰する階層モデルが考えられる。また、近接する地域のイメージは似たものになることが考えられるため、地域間距離データを地域間類似性の背後に設定し2 段階の階層モデルを構築することで、複数の競合データを統合した競争構造分析が可能なモデルを開発する。 また、上記のようなデータ特性から想定されるモデル構築だけでなく、ベイジアンモデル平均など枠組みの異なる手法についても幅広く検討する。
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