研究課題/領域番号 |
16K03948
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
嶋 正 日本大学, 商学部, 教授 (30187421)
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研究分担者 |
高井 透 日本大学, 商学部, 教授 (60255247)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ボーングローバル / 戦略 / 地域企業 / 海外進出 / 持続的競争優位性 / ビジョン / 企業科精神 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
設立から数年以内に海外展開するボーングローバル企業(以下、BGC)自国市場が小さいために海外展開すると言われてきた。事実、自国市場が小さい北欧などにBGCが多いのも事実である。しかも、産業としては最初から世界に市場が存在する、ハイテク産業などから多く輩出されてきた。しかし、今やBGCは多様な産業で、しかも、母国市場の規模に関係なく、多様な国から生まれている。事実、日本でもサービス産業から製造業まで幅広い分野でBGCが台頭してきている。本稿では、我々が調査した製造業分野でのBGCの事例調査からの発見をベースに、日本のBGCの戦略行動特性に関する若干の試論を展開してみる。 まずは、BGCの代名詞である海外展開の早さについてである。つまり、海外展開の時間を圧縮できるのは、BGCの経営者が国内外でグローバルな事業の経験を有しており、その経験を通じて海外市場でのビジネス機会を見いだすからである。つまり、海外展開の可能性をいち早く見つけ出す事業構想力とも言える。そして、その事業の構想力を現実の国際化に結びつけているのが、BGCの経営者が既存のビジネスや海外経験を通じて培った人的なネットワークである。 さらに事業の構想力は、経営資源の蓄積に関しても競争優位性の基盤を提供する。BGCの特徴は、世界市場にビジネス機会を見いだすだけではなく、資源の活用もグローバルに考えた上で、最初から世界市場をベースのビジネスモデルを構築する。そのため、段階的に国際化のレベル化(輸出から直接投資)を上げていく既存のグローバル企業とは異なり、海外進出の際に生ずる競争優位性の海外移転や変革というプロセスが不要になることから、グローバル化が一段と加速化される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国に存在するボーングローバル型企業と、段階的に海外進出のレベルを上げていく伝統型企業との比較分析を行ってきた。ボーングローバル企業の特定産業への偏りはあるが、概ね、順調にインタビュー調査を重ねてきている。そのため、今年度実施するアンケート調査の分析枠組みもすでに構築されている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、アンケート調査を実施する予定である。本格的なアンケート調査を実施する前に、すでにインタビュー調査を実施した企業の経営者にアンケートを送るプレ調査を7月までには一度、実施する予定である。その後に、アンケート項目の課題などを見つけることで、より精緻なアンケート調査に仕上げていく予定である。そのため、正式なアンケート調査は9月から10月を予定している。その後に、多変量解析などを実施することで、数量的に日本型ボーングローバル企業の特徴を把握する。その後に、今まで実施してきたインタビュー調査などの定性的分析から導かれたインプリケーションとの整合性の検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に大量のアンケート調査を実施する予定であった。しかし、事例調査を積み重ねていくうちに、設定していた仮説と、事例から導き出されたインプリケーションと間に若干の齟齬が生じてきた。そのため、再度、アンケート調査を実施する上での分析枠組みを再度、修正して設定することが必要になった。そのため、資金が多く必要とする企業への大量アンケート調査の実施が今年度にずれ込んでしまった。今年は、仮説枠組みの修正も終わり、大量のアンケート調査を企業に実施することが可能である。すでにアンケート調査を実施するために、民間の調査会社とアンケート調査の内容と期間について打ち合わせを重ねている。実施時期は8月前半を予定しており、夏休みを利用して、回収されたアンケート調査の結果を分析していくことになる。また、研究成果については、今年度または最終年度に学会に報告することを予定している。
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