研究課題/領域番号 |
16K03948
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
嶋 正 日本大学, 商学部, 教授 (30187421)
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研究分担者 |
高井 透 日本大学, 商学部, 教授 (60255247)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ボーングローバル / グローバル戦略 / グローバル化 / 海外進出 / ボーンアゲイングローバル / 競争優位性 / 市場戦略 / 技術戦略 |
研究実績の概要 |
昨年度はアンケート調査を実施した。サンプル企業は3000社に送り、225社から回収をえることができた。調査の目的は、ボーングローバル企業(以下、ボーン企業)と段階的に 海外進出(以下、伝統型企業)する企業の戦略特性を多角的な視点から分析することで、 日本のボーングローバル企業の特性を明らかにすることである。またアンケート調査と同時に、地方にある中堅・中小・ベンチヤー企業の事例調査も継続的に進めてきた。ここではすべての項目を議論できないので、調査で際立った違いの項目を取り上げて報告する。アンケート及び事例の調査の結果から、経営戦略の特徴では、伝統型とボーンではあまり差がみられなかった。しかし、質問項目である「成長速度とマネジメントシステムの適合を常に考える」では、ボーンよりも伝統型の方が、明らかに成長速度とマネジメントシステムの調和を考えていることがわかる。十分に国内で競争優位性を構築してから海外進出する伝統型企業の方が、常に成長とマネジメントシステムを慎重に考えて戦略を展開すると考えられる。 それに対して、ボーンの場合、海外での事業展開が急激に成長することもあることから、事例研究でも明らかであったが、マネジメントと成長速度の調和よりも、より成長機会をベースに戦略を展開すると考えられる。我々の調査の経験からも、ボーンの経営者は、成長する時には徹底的にアクセルを踏むという経営者が多い。グローバル化を成長の中核とするボーン企業にとっては、短期的にしか成長の窓は開いていないということであろう。 競争・顧客関係のマネジメントについては、かなり類似性が高く、両企業とも顧客の関係性構築をペースに戦略を組み立てている。両企業ともニッチ市場をベースにグローバルに競争していることからも、かなり戦略の類似性が高い。また、両企業とも市場需要の波及効果が高い顧客を意図的に選択していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染により、地方にある事例企業の調査を進めることが依然として難しかった。そのため、東京近郊などの企業を対象にしてインタビュー調査を行った。しかし、昨年度の後半から、かなり地方の企業も調査に協力してもらえるようなった。とはいえ、アンケートを行う上での、分析枠組みを構築する上での十分な情報を得ることができなかったため、プレアンケート調査や本調査が遅れることになった。アンケート調査もコロナ感染ということもあり、思ったほどの回収率ではなかった。そのため、再度、アンケートの回収率を上げるために、企業に手紙および電話などで協力を求めることになり、さらに分析に持ち込むの時間を要してしまった。 また、事例企業のインタビュー調査も、コロナ感染が拡大している地域では、延期のお願いが多かった。そのため、地方企業の調査には、かなり地域的な偏りが発生していることも、調査の順調な進展に影響を与えることになった。しかし、前述したように、昨年の後半から、感染も落ち着きはじめたので、遅れていた地方のインタビュー調査もかなり進めることができるようにはなったが、インタビュー内容の分析には時間を要している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はアンケート調査の回収率が低かったために、さらに追加のアンケート調査を行うことを考えている。また、今年度、行ったアンケート調査から、ユニークな事例や逸脱事例などを見つけて、さらにインタビュー調査を実施していく予定である。また、今年度は今までインタビュー調査した内容を多角化的な視点から分析することで、新たなインプリケーションを引き出し、そのインプリケーションをベースにして、昨年、行ったアンケート調査に質問項目を追加したいと考えている。今年度のアンケートは、さらに企業の規模を限定して進めることを考えている。また、事例企業のインタビュー調査も、ボーングローバル企業の戦略行動特性をより明確にするために、地方にあるボーングローバル企業の事例を対象にインタビュー調査を積み上げていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染が終息しないため、地方企業のインタビュー調査を予定どおりに進めることができなかった。とくに、予定していた九州、中国、四国地方の企業の調査は予定していた企業の半数にとどまっている。また。大量アンケート調査も、コロナ感染の影響もあり十分な回収率を得ることができなかった。そのため、今年度、再度、追加のアンケート調査を実施する予定がある。
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