研究課題/領域番号 |
16K03950
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
新倉 貴士 法政大学, 経営学部, 教授 (20278774)
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研究分担者 |
池尾 恭一 明治学院大学, 経済学部, 教授 (40131502)
高橋 広行 同志社大学, 商学部, 准教授 (00580325)
西原 彰宏 亜細亜大学, 経営学部, 准教授 (10634272)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 消費者行動 / モバイルアプリ / 顧客エンゲージメント |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績の概要は、以下の2点に整理することができる。 1つは、モバイルアプリの存在が、小売企業のマーケティング戦略において極めて重要になってきていることが確認できた。モバイルアプリをマーケティングに活用することで、待ち構えるスタイルでしかなかった小売企業に、攻めのツールが提供でき、好意的なアプリであれば、プッシュ型の広告やクーポンも好意的に受け入れられる。地域や地元で利用されている食品スーパーであるほど、モバイルデバイスやアプリを通じた情報が受容されやすいことなどが明らかになった。また、アプリが認識されるデバイスの画面は、パソコンに比べて小さいため、画面上部に登場するものが購入される傾向にあり、探し出したい商品が見つけやすいインターフェイスの開発が重要であることが明らかになった。 2つ目は、モバイルアプリに関する顧客エンゲージメント概念の整理である。顧客エンゲージメントは、顧客による購買ならびに取引を超えた行動として、購買後の企業やブランドに関わる顧客の行動に加え、購買外の行動として着目されている。企業と顧客との関係性の観点から顧客エンゲージメントの枠組みを整理し、顧客エンゲージメントを社会的関係行動として概念規定した上で、その対象範囲の特定化を行った。顧客エンゲージメント行動は、「(購買などの)取引行動」と「非取引的行動」に大別される。「(購買などの)取引行動」はさらに、①「購買プロセスへの積極的な参加」、②「非経済的理由での購買」、③「非経済的理由での商品やサービスの購買とは異なる取引行動」に分けることができ、「非取引的行動」はさらに、①「購買後行動」と②「購買外の行動」に分けることができる。顧客エンゲージメントは、消費者が特定企業のモバイルアプリの取得、モバイルアプリを通じた購買時や購買外での積極的な情報探索や関わりを把握する上で重要となることが把握できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、実験用モバイルアプリの模擬実験を予定していたが、モバイルアプリ開発の急速な進展があり、正確な状況把握に努めていたこともあり、予定よりも進捗が遅れてしまった。 但しその分、学術面での深耕を進めることができ、顧客エンゲージメント概念に関するレビューをし、その概念規定や既存の測定尺度のプールが進められた。また、モバイルアプリ全般に関する文献レビューも進められた。 現在、モバイルアプリとモバイルデバイスのデザインや機能性と得られる経験価値に関する尺度を測定している状況にある。この尺度と様々なメディアとの接点、ネットスーパー利用状況などの関連性についても分析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) これまでに実施していない利用実態調査を予定している。具体的には、利用履歴ログを入手し、モバイルアプリ内でどのように行動しているかを分析する予定である。 これと同時に、モバイルアプリ利用者へのアンケート調査を実施する予定である。利用履歴ログとアンケート調査を紐づけして、利用者がモバイルアプリに期待する機能や文脈を把握することができる。また、個人差や利用頻度を考慮しながら、使用文脈ごとのパターン化を試みる予定である。 さらに、本研究のメイン課題である実験用モバイルアプリを開発して、これを用いた利用実験を行う予定である。随時、追加的な企業ヒアリングを行い、最先端のモバイルアプリに関する情報をアップデートしながら、研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)予定していた消費者の利用実態調査を先送りしたことから、これに関連して予定していた使用金額が次年度に繰り越された。また、モバイルアプリの急速な進展に伴い、実験用モバイルアプリの開発と実験計画の費用に不透明な部分が予想されたため、できる限り予定の使用額を抑えるように努めたからである。 (使用計画)予定されていた利用実態調査を行うと同時に、実験用モバイルアプリの開発と実験計画に使用する予定である。
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