研究実績の概要 |
本研究の目的は、ユーザー・イノベーションにおける単独創造アイデアと共同創造アイデアがもたらす価値について、ユーザーへの定量調査を通して理論的・実証的に考察することにある。 最終年度の4年目は、単独・共同創造の成果報告を中心に研究を進めた。具体的には、計画どおり、以下の2点となる。 (1)定量調査の再分析・再考については、前年度の研究会や学会での報告の指摘をうけ、定量調査データの再分析や再解釈を実施したが、意義のある成果を得ることができず、中心的研究課題となるユーザー・イノベーションの単独・共同創造のアイデアに限定した追試を2つ実施することにした。1つめは、6万人の消費者に対して大規模サーベイを実施した。その結果、単独・共同の差は創造には有意な関係はなく、公開には共同創造が単独創造に比べて有意な関係があった。もう1つは、人数を2名、3名、4名とランダムに割当てた大学生のグループに、ラジオCMの制作を依頼し、専門家2名が評価するという実験を実施した。その結果、ラジオCMの企画の水準は共同創造の人数が少ない方が優れていたが、制作物の水準には共同創造の人数は関係なかった。さらに、最終成果の整理に向けて、共同創造に関連する最新のデジタルツール把握のために、国内外の研究会やイベントに参加し情報収集を行った。 (2)研究会(欧州)・学会報告については、最終的な研究成果を整理しつつ、ユーザー・イノベーション研究会やOpen and User Innovation Conference、日本経営学会など国内外の学会報告をはじめ、査読付き論文雑誌への論文掲載や書籍発行、ビジネスセミナーでの講演などを通して広く発信してきた。なお、本研究成果の知見を活かした書籍『1からのデジタル・マーケティング』(碩学舎, 2019年)が、「日本マーケティング学会マーケティング本大賞2019大賞」を受賞した。
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