研究課題/領域番号 |
16K03953
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
水野 誠 明治大学, 商学部, 専任教授 (10361304)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 普及の失敗 / パッケージグッズ / 新ブランド / 新製品 / イノベーション / イノベータ / 初期採用者 / エージェントベース・モデリング |
研究実績の概要 |
新製品の普及の成功-失敗に関して、理論面では、エージェントベース・モデルの応用可能性について検討を進めてきた。過去にマーケティングの主要ジャーナルに掲載されたエージェントベース・モデルの論文の大半が、製品の普及(あるいはそれと実質的に同等の情報の伝播)を扱っており、普及現象との親和性は高い。ただし、本研究が問題とする「普及の失敗」を正しく扱うにはさらなる発展が必要で、その検討を行っている。もちろん、エージェントベース・モデル以外のアプローチも視野に入れるべきことはいうまでもない。 同じ問題に対する経験的研究については、前年度入手した30カテゴリのパッケージグッズにおける全米50地域での約10年に及ぶ店舗レベルの製品販売データ、2地域での個人レベルの購買データの予備的な記述分析を進めた。まず、UPCコード単位のデータをブランド単位に変換し、売上空白期間に基づき新ブランドの導入(誕生)と撤退(死亡)の時期の識別を行った。ここで比較的短い期間で市場から姿を消したブランドは「普及に失敗」したとみなすことができる。新ブランドの地域別の導入にはいくつか興味深いパタンが見られ、これも今後の研究の方向性の1つだと認識した。 個人別購買データについても、新ブランドの採用者の特徴を調べることができる。それについては普及を阻害する早期採用者の存在などが指摘されているので(Anderson et al. 2015)、本研究でも検証を行うとともに、早期採用者のカテゴリを超えた一貫性など、より基本的な観点での分析を進めている。これらの分析に当たり、マーケティングにおけるイノベーションの普及研究の第一人者である海外の研究者の協力を仰ぐことになり、連携して研究していくことになった。現在進行中のデータ解析の結果について、2018年度には国内外の学会で発表すべく申し込みを行い、採択されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析の主な対象を耐久財からパッケージグッズに移したため、当初立てた目標とはやや異なるステップで研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、新ブランドの採用者を個人レベルで扱い、普及に失敗(あるいは成功)したブランドに特徴的な初期採用者の傾向を調べることが喫緊の課題になる。また、集計レベルのデータから、普及の失敗の規則性について系統的に調べることが課題となる。 当初計画していたウェブ調査については、研究の方向性が変わったことで、その必要性が低下したと判断している。むしろ、サービスや耐久財に関する普及データを入手し、上述のような分析を行っていくことに意義があると考えられるので、その可能性を探っている。 普及の失敗に関する理論モデルとして、引き続きエージェントベースモデルなど適用可能なモデルの探求を続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象を耐久財からパッケージグッズに変更したことで予定していたデータ収集の方法が変わったため。
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