研究課題/領域番号 |
16K03955
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
浦上 拓也 神奈川大学, 経済学部, 教授 (40387585)
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研究分担者 |
矢作 敏行 法政大学, イノベーション・マネジメント研究センター, 研究員 (40230289)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PB製造受託 / NBポートフォリオ |
研究実績の概要 |
今年度の目標は、メーカーのデュアル・ブランド戦略について、分析の枠組みを検討することと、それに基づいて事例研究を行うことであった。 研究の枠組みとして、大手NB(ナショナル・ブランド)メーカーがPB(プライベート・ブランド)製造受託を行う理由は、次のような2段階で考えることが適切であると考えた。第1段階はNBポートフォリオである。第2段階は、市場構造や市場地位と、また工場稼働率や多品種少量生産といった内部経営資源である。既存研究では第2段階の理由がよく取り上げられてきたが、大手NBメーカーの場合、NBポートフォリオが、PBのポジショニングに大きな影響を与えると考えられる。 事例研究は、NBポートフォリオがPB製造受託にどのような影響を与えるかについて、NBの水平的拡張や垂直的拡張を手掛かりとして、複数の事例を対象としている。整理することができた1つの事例は、以下のようなものである。 PBのポジショニングは、主要なNBを模倣する傾向にあるが、主要なNBとのカニバリゼーション(共食い)を避けて柔軟にPB製造受託を行っているNBシェア1位メーカーを取り上げた。なぜ、NBとPBのカニバリゼーションを避けることができたのか、NBポートフォリオの構築過程から把握することによって考察した。もともと企業規模の小さな段階からPB製造受託を行っており、2位メーカーの製品との間に品質やコストの差が存在した。品質やコスト差があったために、2位以下のメーカーが1位メーカーの主要なNBを模倣したPB製造受託を行うことができなかったのである。一見すると特殊な事例と思われるが、類似したパターンは考えられる。引き続き事例研究を行い、PB製造受託の理由、さらにデュアル・ブランド戦略についての考察を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度から行っている文献調査と分析の枠組みの検討が遅れ、また事例研究の進捗も遅れている。事例研究については、まとめることができたのは1事例であるが、複数の事例を並行して進めている。また、事例研究を進める中で、分析の枠組みの再検討も感じており、研究は直線的には進んでいない。具体的には、食品メーカーを対象としているが、NB製品、PB製品に加えて、業務用製品も、そのブランド・ポートフォリオにとって重要ではないかと考えている。つまり、業務用製品が、生産面とマーケティング面においてPBに影響を与えている可能性である。この点については、事例研究によって確認しながら進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き事例研究を行っていく。当初は、PBを利用して成長している中小メーカーも対象とする予定であったが、その優先順位を下げる。その理由は、進捗状況で述べた通り、大手NBメーカーのNB・PBに、業務用製品を加えて考察することを、当面は優先するためである。 事例研究の後に、仮説検証のためのアンケート調査を行なうことを検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
事例研究の進捗状況が遅れ、アンケート調査の検討までに至っていないために、次年度使用額が生じた。 翌年度分も含めた金額については、主に事例研究で使用するPOSデータ(食品スーパーにおける販売情報)の購入、またはアンケート調査等を実施する諸費用とする予定である。
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