今年度の目標は、メーカーのデュアル・ブランド戦略について、分析の枠組みをさらに検討するとともに、事例研究を積み重ね、そのまとめを行うことであった。 研究の枠組みとして、大手NB(ナショナル・ブランド)メーカーのPB(プライベート・ブランド)製造受託に影響を与える要因は3つに整理できると考えられる。1つは、小売業とのパワー関係、2つ目は、工場稼働率の向上などといったメーカーのPB製造受託に対する直接的な意図、3つ目がNBのブランド・ポートフォリオ戦略である。この3つ目のNBポートフォリオ戦略はこれまで焦点を当てられることはなかったが、大手メーカーにとっては大きい要因と考えられる。そして、NBオートフォリオ戦略のタイプとして、NBの垂直的差別化を重視する場合と、NBの水平的差別化を重視する場合で、PBへの対応が異なるという仮説を導出した。 今年度に整理した事例は、NBの水平的差別化を重視する戦略を有するメーカーである。当該メーカーのPB製造受託は業態別に異なる考え方に基づいていた。スーパーに対しては、魅力ある多様なブランドの提供が、PBへの対抗策として機能していた。一方で、コンビニエンスストアに対しては、大・小容量の製品ともにPB製造受託を行っていた。これは、水平的差別化が競争の中心であるため、販売依存度の高い小売業がPB中心の品揃えを行う際には、PB製造受託せざるを得ないためと思われる。ただ、細かくブランド拡張を行うNBポートフォリオ戦略を活かして既存NBを改良してPB製造受託を行うなど、NBとのカニバリゼーションを避けながら対応していた。 今後の研究の展開として、現在さらに垂直的差別化を重視した戦略と水平的差別化を重視した戦略の事例をまとめている。今までに整理したものを含めて4つの事例から、NBポートフォリオ戦略がPB製造受託にどのような影響を与えるのかまとめていきたい。
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