最終年度の研究成果は、日系ドラッグストアにおける小売技術の海外移転戦略の明確化と、そこに作用した埋め込み要因の抽出を行ったことである。さらに(1)受入国への埋め込みにより小売技術の移転戦略が規定されること、(2)本国への埋め込みは派遣者を通じて作用することが見て取れた。さらに、(3)進出初期段階の埋め込みの影響が重要な意味を持つことを示唆した。 この成果の意義は、小売システムの海外移転プロセスにおける受入国の埋め込みの影響と、本国の派遣者を通じた埋め込みの影響の重要性を指摘した点にある。また、小売技術を4区分(提供物、物流、出店、チェーンストア・オペレーション」)、12種類(品ぞろえ、52週MD、店頭演出、接客(教育)、接客(報奨)、物流機能内部化、エリアドミナント、フォーマット開発、棚割標準化、本部MD、中央本部管理、SV制度)に整理し、それぞれの埋め込み影響と移転戦略を明らかにしたことで、小売技術体系としての小売システムの解明と、各技術における移転戦略の複合体としての小売システムの海外移転プロセスの解明を行った点も重要な点として指摘できる。 また研究期間全体としては、アジア市場における小売国際化の現状、他業態小売業の国際化プロセスについて研究を進めた。前者は対象となる市場の拡大にあたり、後者は対象となる小売業態の拡大にあたり、日系ドラッグストアの中国における海外移転戦略プロセスの適応可否を明らかにするものであるといえる。 上記により、研究目的である日系小売企業の(1)顧客接点技術および、(2)小売システムについて、その生成プロセスと海外市場への移転プロセスが明らかになったと考える。
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