研究課題/領域番号 |
16K03959
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
冨田 健司 同志社大学, 商学部, 教授 (40329149)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 知識 / マーケティング / 知識商品 |
研究実績の概要 |
2016年度は、先行研究のレビューについて行った。「知識」概念について、経営学さらには社会学や心理学などの分野における先行研究をレビューした。当然、分野を広げればカバーすべき先行研究の量が格段に増え、メジャーな先行研究は抑えたものの、まだまだ読みたい先行研究の数は多い。そうした先行研究を基に、「知識」の定義付けを行ったが、知識とは不可視性の性質があるため、先行研究の定義において統一的見解を図るのが困難であった。 次に、製薬産業における創薬ベンチャーと製薬企業へのインタビューにおいて、マーケティング戦略の特徴と課題とを探った。両者の課題は幾つか見出すことができたものの、特徴についてはまだマーケティング戦略が不十分な企業が多いのが実情であり、「特徴」を見出すのに、もう少し調査を重ねていきたい。そうした特徴を見出すのが難解な理由として、新薬開発における特徴を指摘することができる。つまり、新薬の開発には長期にわたる臨床試験などを行わなければならないため、製品化されるまでに10年から20年もの長期の期間を要するという特徴がある。知識商品である候補化合物の取引が成功したか否かを判断する最大の基準が、製品化することができたが否か、もっといえば企業として収益を上げることができたか否かであるため、そうした結果が分かっている取引、マーケティング活動の数がかなり限られてしまっている問題点を指摘できる。そのため、2016年度は数が限定されるサンプルから結論を出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、先行研究のレビューについては、研究実績の概要でも述べたが、経営学だけでなく社会学や心理学など他領域の先行研究にも視野を広げた。それぞれの領域で膨大な先行研究が蓄積されているため、全てをカバーすることはもちろん不可能である。2016年度は各領域のメジャーな先行研究からレビューしていったため、今後もできるだけ多くの領域をカバーしていきたい。 また、創薬ベンチャーと製薬企業への調査については、幾つかの企業へのインタビュー調査を行うことができたものの、もう少し調査したいと考えている。とはいうものの、該当する企業事例の数がある程度限定されるため、大規模サンプルではなく小規模となるため、特徴的な企業事例は把握することができたと思われる。しかし、創薬ベンチャーを対象とした質問票調査(アンケートによる定量調査)については、該当企業の把握に時間がかかり、調査が不十分な段階であり、そのため、「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2017年度は、議論の一般化を図るため、製薬産業以外への産業へ視野を広げていく予定だが、並行して2016年度の積み残しの作業も行っていきたい。具体的には、創薬ベンチャーと製薬企業へのインタビュー調査である。しかし、これについては2016年度である程度の結論を見出すことができたため、調査対象企業数を増やす必要はあまりないかもしれない。あくまでも結論の確認という程度において、可能な限りインタビュー調査の数を増やしていきたい。 次に、創薬ベンチャーへの質問票調査については対策を講じる必要がある。なぜなら、創薬ベンチャーの多くは上場していないため、各企業の状況の把握や、そもそものどのような企業が存在しているのかを把握することが困難だからである。そのため、創薬ベンチャーを支援する機関などの協力を依頼して、そうした機関に登録している、或いは交流のある創薬ベンチャーを紹介してもらう手法をとることを予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
創薬ベンチャーに対する大規模な質問票調査が遅れていることが原因となっている。アンケート用紙回収後に、データを入力する際に生じる人件費・謝金を予定していたが、2016年度はそうした大規模調査を行うことができなかった。これが、費用面の差を生んだ最大の原因といえる。 さらには、企業へのインタビュー調査においても、調査対象事例の該当数が少なかったため、予定してよりも少ない数のインタビュー調査に留まったことも、2つめの理由として指摘できる。
|
次年度使用額の使用計画 |
2016年度に実施することのできなかった創薬ベンチャーへの質問票調査は、できれば2017年度に行っていきたい。調査を行えば、当然、データを入力する必要が生じるため、人件費・謝金が必要になってくる。 また、企業へのインタビュー調査に関して言えば、調査対象事例をもう一度精査することにより、該当数が増えてくると思われる。そうすれば、当然、インタビュー調査を行うべき企業数も増えるため、そうしたインタビュー調査を積極的に行っていきたい。
|