研究課題/領域番号 |
16K03959
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
冨田 健司 同志社大学, 商学部, 教授 (40329149)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 創薬ベンチャー / ライセンシング / オープン・イノベーション / コミュニケーション |
研究実績の概要 |
今年度は、創薬ベンチャーに対する質問票調査を行った。創薬ベンチャーは基礎研究や探索研究に特化する経営資源の選択と集中により、オープン・イノベーションを前提とした研究開発行動をとっている。そのため、研究開発プロセスの途中で、知識商品を売買する必要があるが、候補物質の新規性が高ければそれだけで売却できるという認識がほとんどの創薬ベンチャーにあり、プロモーションへの意識が高いとはいえない。売却には、買い手との商談が不可欠となるが、戦略として商談を捉えている企業はきわめて少ないし、商談をマーケティングにおけるプロモーション活動として捉えている企業も少ない。 売り手(創薬ベンチャー)と買い手(製薬企業)の双方がライセンシングを好むにも関わらず、ライセンシングの実際の件数はさほどでもない。そこで、ライセンシングを成功させる要因を探っていた。 ライセンシング(オープン・イノベーション)に影響を与える変数を探るための7つの仮説を設定し、インタビュー調査と質問票調査とから検証した。インタビューは、創薬ベンチャーと製薬企業、それぞれ2社ずつを対象とした。質問票は、創薬ベンチャー349社に質問票を郵送し(41通が宛て先不明)、42社から有効回答を得ることができた(返信率は13.6%)。重回帰分析とSEM(Structural Equation Modeling:構造方程式モデリング)による分析を行った。調査の結果、先行研究でコミュニケーションが取り上げられることはなかったが、本研究はオープン・イノベーションにおけるコミュニケーションの重要性を指摘することができた。コミュニケーションはオープン・イノベーションに直接的にも影響を及ぼすが、それ以上に、コミュニケーションは顧客志向を媒介として、オープン・イノベーションを高めることが分かった。 それ以外にも、スポーツ産業にも目を向け、調査を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
製薬以外の他産業における成功事例を見つけて、議論を一般化したいが、他産業における良い事例をなかなか見つけることができない。その要因は、特に実務において知識と技術との明確な区分が難しいことにある。これは、前年度にも問題としてあげたが、依然としてこの問題が残っている。とはいえ、電機や飛行機などの産業への調査も進んでいるため、「やや遅れている」と区分した。
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今後の研究の推進方策 |
各業界へのインタビューの調査を重ね、適切な産業と良い事例を見つけていくことが必要である。これまで重ねてきたインタビュー調査では、たくさんの実務家が知識商品のオープン・イノベーションに関心を持っている。具体的には、成功に導くための方策と収益化への関心が高い。そのため、そうした意識の高い実務家、企業、産業に対して、インタビュー調査を重ねていくことで、適切な事例を見つけることができると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本の企業に対して、インタビュー調査を行いたかったが、日程の都合や年度末の緊急事態宣言などにより、インタビュー調査に出かけることが出来なかった。そのため、2020年度に調査に行くことにより、使用していきたい。
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