本研究ではこれまで製薬産業を調査対象とし、知識の取引を活性化する機会としてオープン・イノベーションに着目してきた。創薬ベンチャーは知識製品である候補物質を売却するライセンシング(オープンイノベーション)を望むが、思うように成果をあげられない企業も多い。それはなぜかを問題意識とし、その解明を試みた。創薬ベンチャーへのインタビューに基づく定性調査と、アンケートに基づく定量調査といった2つの調査の結果、創薬ベンチャーがライセンシングを行うにあたり、顧客志向とコミュニケーションとが重要であることを明らかにした。そして、顧客志向とコミュニケーションへの意識はライセンシングに成功している企業とそうでない企業とで明白な差があったことも見出された。 本研究では、製薬企業への調査を深めることに加え、これらのことを製薬だけではなく、他の産業でも言えるのかどうか調査も進めた。技術志向的な企業に対してインタビュー調査を行うと、確かに本研究の結論は言えそうだが、それをアンケート調査に基づく定量調査で検証するには、期間、予算共の限界があり、今後の課題に残された。 その代わり、本研究のエッセンスを英語で論文にし、国際学会の学会誌に投稿したところ、採択されただけでなく、査読者に興味を持ってもらい、シニアエディターとの議論が白熱した。その意味で、本研究で得た結論は、他産業だけでなく、他国で応用可能だということが分かった。
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