研究課題/領域番号 |
16K03961
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研究機関 | 大阪商業大学 |
研究代表者 |
横見 宗樹 大阪商業大学, 総合経営学部, 准教授 (20388424)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | LCC(低費用航空会社) / 空港の非航空系収入 / 空港経営 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、LCC(Low Cost Carrier:低費用航空会社)が空港の非航空系活動に与える影響に関する実証分析である。今日の空港経営においては、旅客ターミナルにおける物販事業や駐車場運営など、いわゆる非航空系活動の重要性が高まっている。わが国においても、多くの空港が経営改善の起爆剤としてLCCの誘致を模索するなか、LCC旅客が空港の非航空系活動に与える影響について明らかにすることは、空港当局にとって重要な関心事であるとともに、今後の空港運営のあり方に関する政策提言を導く上でも有益である。 こうした問題意識にもとづき、本研究では、成熟したLCC市場を有しており、かつ体系的な統計が整備されているイギリスを対象として、LCCが空港の非航空系活動に与える影響について定量的な分析をおこなうことを目的とする。 本年度の研究では、2001年~2014年までのイギリスの空港をサンプルとして、航空系収入モデルと非航空系収入モデルの2つのモデルに対する分析をおこなった結果、LCCはFSC(Full Service Carrier:既存大手航空会社)よりも「航空系」と「非航空系」ともに空港の収入に与える影響は小さいという結果となり、空港経営に対する以下の示唆を得ることができた。 1.イギリスの事例より、LCCの誘致により空港を活性化するモデルは一定の効果が認められる一方で、LCCはFSCよりも「航空系」と「非航空系」収入ともに与える影響は小さいため、空港が非航空系活動における収入水準を維持するためには、LCCのみに特化するのでなく、FSCとバランスの取れたキャリアの誘致が重要である。 2.非航空系収入においては、LCCそのものに焦点を当てるのではなく、(LCC かFSCかよりむしろ)航空会社の就航先や旅行者の居住地による消費傾向の差異に注目する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおり、国際航空輸送学会(ATRS2016:Air Transport Research Society)において研究成果を報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
国際航空輸送学会(ATRS2016)でフロアより指摘を受けた事柄でもあるが、非航空系収入の構成要素ごとに、さらに細かく分析をする必要がある。なぜならば、旅客ターミナルの物販収入に関しては、LCC旅客の与える影響はFSC旅客より小さいと考えられる一方で、とくにヨーロッパでは自家用車を利用するLCC旅客の空港選択行動は距離に対して相対的に非弾力的である(LCCの安価な運賃を享受するため、たとえ長距離でも空港まで自家用車で移動する傾向があるということ)と考えられるため、駐車場収入に関しては、LCC旅客の与える影響は逆にFSC旅客より大きいと推測されるからである。 そこで、非航空系収入の変数を、物販、駐車場、施設賃貸(retail, car parking, property)に分割したうえで、これらに対してLCCが与える影響を定量的に分析する計画である。分析に必要なデータは既に揃っており、この研究成果については平成29年度の国際航空輸送学会(ATRS2017)で報告することが決まっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外共同研究者であるDr. Phillip Wheat氏(イギリス・リーズ大学)との研究ミーティングのために渡英する予定であったが、予算不足により、あらためて次年度に十分な時間的余裕を取ってミーティングを実施することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
イギリス・リーズ大学における研究ミーティングに係る旅費
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