本研究の目的は、LCC(Low Cost Carrier:低費用航空会社)が空港の非航空系活動に与える影響に関する実証分析である。 今日の空港経営では、旅客ターミナルにおける物販事業や駐車場運営など、非航空系活動の重要性が高まっている。わが国でも、多くの空港が経営改善の起爆剤としてLCCの誘致を模索するなか、LCC旅客が空港の非航空系活動に与える影響を明らかにすることは、空港当局にとって重要な関心事である。くわえて、空港民営化(空港運営の民間委託)が本格的にスタートした昨今、本研究による知見は今後の空港運営のあり方に関する政策提言を導く上でも有益と考えられる。 先行研究では、「非航空系収入」を一括りにして分析を実施したものが一般的であるが、実際には非航空系収入の内訳には様々な活動領域が含まれているため、本研究では、これを「小売コンセッション」、「駐車場」、「不動産収入・賃貸料」と分割したうえで、それぞれに関する旅客あたり収入を被説明変数とし、LCCとLCC以外の航空会社について国内線と国際線の離発着回数や座席数を組み合わせたものを説明変数としたうえで、2010年~2015年におけるイギリスの16空港をサンプルとして分析を実施した。 分析の結果、①小売コンセッション:LCCの「国際線」旅客は、空港における飲食店や商業施設でLCC以外の航空会社の旅客よりも相対的に多くを消費する。②駐車場:「LCCとLCC以外の航空会社の差異」よりも「国内線と国際線の差異」のほうが、より重要である。③「不動産収入・賃貸料」:主としてLCCの国内線が多くを占める空港では、これらの収入は相対的に低水準である、などの結果が導かれた。 さらに、本年度は英国リーズ大学の共同研究者とのミーティングのなかで、各空港の旅客流動データを使用することで、旅客の発地国属性を変数に加える可能性についても検討を深めることができた。
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