研究課題/領域番号 |
16K03966
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
平山 弘 阪南大学, 流通学部, 教授 (00368383)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ブランド価値 / プラットフォーム / ローカルニッチ / 中小・零細企業 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は中小・零細企業によるオープン・イノベーションの有効性が期待できるプラットフォーム市場の理論的枠組みの構築をブランド価値創造の観点から明らかにすることである。二年目の平成29年度は理論的には(1)ニッチ市場の分類の精緻化(①稀少性差別化②カスタマイズ化③アッセンブリー化④コモディティ化)、(2)ブランド価値基盤における主に早すぎる資産と遅すぎた資産の概念を提示、(3)不便益とプラットフォーム化についてマーケティングを絡めることで、新たな価値基盤やプラットフォームの創造の可能性について議論を深めた。また、ブランド価値創造の観点からはブランド化戦略の方向性と部門間リンケージの強さについて検討し、実証面からもBtoB企業においては独自の技術力を製品に落とし込むためには部門間リンケージの強さがより重要になることを確認した。 一方、国内の事例研究としては、岩手県北上川流域ものづくりネットワーク事務局および関連企業へのインタビューを行い、プラットフォーム化に関わる多くの知見を得ることができた。国外事例研究においてもタイおよびイタリアでの中小・零細企業への調査研究を通じて本研究の精度が深まったと考えられる。今回の日本を含めた3か国の中小・零細企業の価値創造スタイルを見てみると、日本においては取引先企業の仕様書をより正確により高い技術レベルでの製品や部品の提供を行っているのに対して、イタリアの主に鞄等の革製品を扱っている中小・零細企業においては、旧来から承継された技術や図面に基づいて忠実に再現するとともに、それらが利用される生活環境をも意識した場の創造、新たなデザイン面からの価値創造を工房(職人)と卸・小売会社との強い結びつきでもって時間をかけた長期的時間軸の設定および先代から連綿と受け継がれてきた人間関係でもって両者ともにwin-winな関係構築を目指しているということになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中小・零細企業で求められるプラットフォーム化とブランド価値創造基盤の理論的研究が順調に進んでおり、また国内外の実証研究においてもインタビュー調査でとりまとめた記録を二年目の本年度は整理・確認を中心に実施したが、それらは最終年度において研究論文および著書刊行、学会発表、シンポジウムの開催を通じて、より充実した研究報告ができる土台づくりとなっていることから、今後もそうした方向性でさらに深まりや奥行きを目指して研究を進めていくことになる。なお、本年度の業績については、理論的整理や国内外の実証的考察面(東北岩手県・タイ・イタリアにおける中小・零細企業へのインタビュー調査から見えてくるもの)に多くの時間を割いたため、その研究成果の多くはまとめて最終年度における単著の著書および分担執筆の著書、論文化で成果を出すことになる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は最終年度ということで、これまで取り組んできたローカルニッチの類型化、ブランド貢献化要因の特定化および理論モデルを統合化することで見えてくる新たなブランド価値創造型プラットフォームの提示に向けて研究を深めることになる。中小・零細企業同士のオープン・イノベーションによって達成される独自のプラットフォーム化形成、結果としての地域自体がプラットフォーム化する面としての蓄積・集積化する、より上位の概念としてのプラットフォームの基地化の可能性についても議論をおこない、あわせて中小・零細企業で必要とされるブランド価値創造戦略についても提示することも目指している。
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