2019年度の理論面および実証面での研究実績としては、(1)ブランド価値基盤という新たな概念を提示したこと、(2)ファッションとスポーツの融合の観点からのプラットフォーム化について実証的考察から明らかにしたということが挙げられる。 これまでのブランドやブランド価値を巡る議論については、この可視化できる地上から出てくる地表部分の価値がその中心であった。しかし、本研究においてはそのブランド価値の基盤をなす地下部分にまで価値の対象範囲を広げることで、新たなブランド価値を巡る知見を提示することになる。ブランド価値基盤はあらゆるブランド各々の存在を根底から支えるものであり、そのブランドが拠って立つところの価値基盤が侵食されたり、地盤沈下によって、ブランド価値を地表に立つ建物として例えるならば、いくら建物が丈夫であったとしても、その地盤が何らかの理由で揺らぎ、陥没や地割れなどで崩壊したり、その価値が喪失したりする可能性が想定できるのである。 つまり、ブランドやブランド価値の秀逸性が叫ばれたとしても、その根底を成すブランド価値基盤が強固だったものが弱体化すれば、一気に崩壊へと向かう可能性が高まるということになる。 加えて、スポーツアイテムをおしゃれ着・通勤着に利用するなどスポーツとファッションの関係性を経営学でいうところの「プラットフォーム 」の概念を用いて、ローカルニッチ市場からナショナルニッチ市場を経て、グローバルニッチ市場へと進出するために必要な「オープン・イノベーション 」の有効性が期待できる理論的枠組みを、ブランド価値創造のための協働メカニズムの観点から解き明かしたことにある。
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