研究課題/領域番号 |
16K03968
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 善信 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (00140476)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | マーケティング / セリング / 営業 / ターンアラウンド / インプレッション・マネジメント |
研究実績の概要 |
平成28年度においては、おもてなし研究にかかわって3つの研究下位領域において4本の研究成果を発表した。 1つ目の研究下位領域は本下真次氏との2本の共著論文である(内1本は英語論文)。この研究では、米国流のマーケティングと販売(セリングもしくはセールス)という概念と日本の営業という概念を企業の実践的な意味合いから、それらの組織内での位置づけの違いを明らかにした。米国の場合にはマーケティングが販売の上位概念であり、マーケティングが売る仕込みを企画し、それに従って販売が展開されるという構図になっている。逆に、日本の場合には営業が売る仕組みに加え実際の販売も担当し、顧客のために自社と顧客内の社内調整を行う点に大きな違いがあった。今後は、そのような日本型の営業が、いつ、どこで、どのようにして生成してきたのかを研究する。 2つ目の研究下位領域は、おもてなしとサービス企業のターンアラウンドに関係している。この研究成果は平岩英治氏との共著論文である。この論文ではターンアラウンドに成功した企業の生成プロセスをおもてなしの精神とリーダーシップの観点から一般化、理論化を試みた。今後は、非営利企業のケーススタディ研究を行う予定である。 3つ目の研究下位領域は、おもてなしの源流についての研究である。源氏物語の主人公の光源氏のインプレッション・マネジメント戦略の特徴について考察した。相島淑美氏との共著論文(英語論文)である。光源氏のインプレッション・マネジメント戦略の特徴は、貴族階級においては感情をコントロールし、場の空気を戦略的に操作することによって、好ましい結果を得るということが明らかにされた。この結論は、これまでのおもてなしの源流研究での結論と共通である。このインプレッション・マネジメントの側面からも日本のおもてなしの特徴が明らかにされた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の1年目の研究目標は、申請書にもあるように、「これまでの本研究代表者の先行研究を整理しながら日本のおもてなしの性格の歴史的、国際比較的視点からの源流から完成形までの総合的、体系的解明と、そこでの他領域での理論概念の適応とおもてなし研究独自の理論概念形成の可能性を検討する」ことである。 平成28年度における研究成果については、4本の共著論文の公表と国際学会等での発表を行なうことができたことから、当初の計画通りに進展していると考える。 また、私が指導している博士号取得者(1名)や博士後期課程学生(4名)、そしてミズーリー大学のMark Parry教授も本研究に協力していただいているので、研究遂行上のリスク分散はできていると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目の研究推進方法としては、おもてなしの源流研究(特に、茶の湯のビジネス慣行への影響の強さとその歴史的なプロセスの研究)、おもてなしと日米のマーケティング・営業の相違点の歴史的な現状分析、そしてさまざまな業界での顧客とサービス提供者(製造業者のサービス業化も含む)との価値共創やC2C間での価値共創のケーススタディ・リサーチを行う。つまり、3年目の総合的、統合的なおもてなし研究のベースとなる研究を推進してゆく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
米国の共同研究者(Mark Parry教授)を訪問するために旅費を計上していたが、Parry教授が来日し、国内で共同研究を行ったため、未使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
米国のParry教授の研究室において共同研究を実施する予定にしているため、その旅費に充てることとする。
|