研究実績の概要 |
本研究の目的は,フランスの大手スーパーと納入業者との関係から熾烈な低価格商品競争が可能になっている仕組みの一端を明らかにすることであった。最終年度はヒアリングを中心に行った。ヒアリングの訪問先と主な聞き取り内容は次の通りである。①フランスのスーパー,レストランに商品を納入する日本の食品会社;販売チャネルの確保,小売業との交渉内容,②パリ郊外の有機野菜協同組合;チャネル開拓方法,生産者の雇用の特徴,③フランス・ブルターニュ地方の有機農産物生産者,生産・販売従事者,流通業者のそれぞれ複数名;有機農産物の農家による生産・販売方法ならびに小売業との関わり方,有機農産物の流通業者の販路開拓と経営方針,④海外高級品を輸入販売する日本の卸売業者;フランスの高級茶取扱に至った経緯,販路の開拓方法,経営戦略,⑤フランスの個人経営者,有機農法の生産者・消費者・組織運営者;ECの広がりによる経営への影響,経営状況。 フランスでは低価格競争の激化により,生産者も小売業もともに疲弊している。それを打開する方策の一つとして有機生産物に注目が集まっている。スーパーは有機商品の品揃えをここ数年で一挙に拡大している。また生産者による消費者への直売や有機商品専門店の出店数は急増している。生産者の販売チャネルは大手スーパー向け,直販売,専門店向け,それらを組み合わせたものなどさまざまであることが明らかになった。生産者にとっては生活の保証される販売価格,小売業にとっては低価格商品であっても収益が確保できる方法でかつ世論の批判を受けない生産者との取引方法が追求されている。有機農作物生産者を支える消費者の支援の輪が各地方に多数存在している点はフランス的特徴だといえる。これらは新たな消費の形,すなわち生産から消費までを貫くより安定的な消費様式の一つであるといえる。
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