研究課題/領域番号 |
16K03975
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
春日部 光紀 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (10336414)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 複会計システム / 資本勘定 / 収益勘定 / 一般貸借対照表 / 鉄道会社 |
研究実績の概要 |
今年度は,前年度に行ったイギリス鉄道会社における複会計システムの分析にもとづいて,比較会計史の観点からアメリカ鉄道会社の年次報告書の検討を行った。 平成30年度は,昨年度の検討していたDetroit and Milwaukee Railway(D&M)を論文として発表し,Atlantic and Great Western Railway(A&GW)の検討も行った。同社の会計報告書は1858に開示されたものであり,イギリスで複会計システムを最初に法制化した1868年イギリス鉄道規制法より10年も早い事例であった。会計報告書の形式を1868年イギリス鉄道規制法のモデルとなったLondon and North Western鉄道会社のものと比較し,同様の観点から作成されたものであることを確認した。A&GWの会計報告書も1866年に作成されており,かなり早い段階で伝播していたと考えられる。開示書類全体としては,情報量が多く,特に月別収入源泉別明細表はLondon and North Western鉄道会社にはみられないものであった。さらに,各種の比率分析もなされていた。 学会報告としては,研究の過程で新たに発見したガス会社の会計実務に関して,41th European Accounting Association Annual Congress 2018で報告を行った。またサセックス大学のリサーチセミナーでも報告を行い,海外の会計史研究者との研究交流を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も大学図書館,国立公文書館等の資料調査を綿密に行い,研究に支障のないよう進めている。ただし,鉄道会社の資料が膨大であること,新たに所在が判明した資料等も存在することから,継続的な資料収集は行っていく。 また前年度も指摘をしたが,本研究は主に鉄道会社の複会計システムを対象としているが,イギリスのガス会社において複会計システムが採用されていたことを資料によって裏付けている。これまでの通説では,同システムはイギリス運河会社で生成し,イギリス鉄道会社で確立したとするのが痛切である。しかしガスの事例はイギリス鉄道会社に先行するものであり,しかも完全な形式として複会計システムを確立している。これまでの通説とは大きく異なる結論を提示できる可能性があり,ガス会社の事例も取り入れて検討している。
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今後の研究の推進方策 |
鉄道会社の資料をまとまて所蔵している図書館は少なく,また劣化により閲覧ができない場合もある。散在している資料を蒐集していくため,国外の図書館や公文書館への訪問調査・コピー依頼等を効果的に併用していく。 最終年度に向けては,国際学会等での報告と研究交流を踏まえて,研究の総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会にアプライできなかったため。次年度に報告予定としている。
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