研究課題/領域番号 |
16K03979
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
首藤 昭信 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (60349181)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 会計学 / 保守主義 / 利益調整 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,会計上の保守主義の採用と投資行動に反映される経営者のリスクテイキングの関係を実証的に分析することである。具体的には,日本企業を分析対象として,(1)保守主義の程度が高まることによって企業の投資行動およびその効率性はいかに変化するか,(2)日本特有の制度的要因が,保守主義と投資行動の関係にどのような影響を与えるか,ということを明らかにする。保守主義の経済的機能に関する研究は,会計学研究の中心的なテーマの1つとなっているが,投資行動に関する研究は十分な蓄積がなく,特に日本企業特有の保守主義の特徴はほとんど解明されていない。そのような解明は,会計研究のみならず,金融実務や開示規制にも有益なインプリケーションをもたらすことが期待される。 昨年度までに行った広範なサーベイの結果,保守主義の測定方法である。条件付保守主義の測定方法には,先行研究によって複数のモデルが提案されているが,いずれのモデルにも測定誤差の問題が存在し,推計モデルの選択には慎重な配慮または改善の可能性が残ることが明らかとなった。そこで,保守主義だけでなく裁量的発生高等も含めた利益の質を広範に分析対象としたリサーチ・デザインを設定し,実証分析を行った。具体的には,2000年前後において,メインバンクや系列といった日本特有の制度的要因が変化したことが,利益の質と投資の効率性の関係に影響を与えたかどうかについて分析を行った。分析結果は,当初の予測を支持するものが概ね得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究計画は,分析デザインの設定と実証分析の実施であった。いずれも順調に計画を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究予定は,当該年度に行った実証研究の結果を精査し,解釈を行った上でワーキングペーパーを執筆することである。論文執筆は,英文で行うことを予定しているため,専門の英文校正会社を利用して,英文の品質を高めることが必要である。研究成果は,国内外の学会で発表する。特に,本研究は国際的な会計研究への貢献を意識しているいため,海外の学会に論文を積極的に投稿して,報告を行うことを目標とする。具体的には,アメリカ会計学会(AAA),ヨーロッパ会計学会(EAA),アジア会計学会(AAAA)などの学会を想定している。 研究を遂行する上での課題としては,保守主義ではなく利益調整といった他の利益の質の指標を主分析の結果として利用する可能性が高いため,背後の理論仮説の再検討および修正の必要がある。すでに利益調整を対象とした研究のサーベイは終えており,仮説の再構築も終了している。現在得られている結果は,仮説と整合的な結果が得られている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)米国のアメリカ会計学会への出張を予定していたが,諸事情により参加できなったため,当該助成金が生じた。 (使用計画)翌年度は,前年度に行けなった複数の国際学会に参加することで当該研究に関する意見交換を行う予定であり,その旅費に充当する。またリサーチデザインの変更により,新規のデータベースを購入することで,助成金を使用する予定である。
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