本研究の目的は,会計利益の質と経営者のリスクテイキングの関係を実証的に分析することである。具体的には,(1)質の高い会計利益の報告は投資の効率性を高めるか,そして(2)保守主義の採用は報酬契約の効率性を高めるか,という2点について日本企業を対象に実証分析を行うことを目的とした。本研究で得られた主要な結果は,第1に,1990年代までの日本企業では,会計利益の質と投資の効率性の間には有意な関連性が見られない一方で,2000年代では質の高い会計報告は投資の効率性を高めることが分かった。第2に,報酬利益反応係数が高い企業では,保守主義の需要が高まることが分かった。
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