研究課題/領域番号 |
16K03980
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
高橋 賢 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50282439)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 産業クラスター / バランス・スコアカード / 戦略マップ / 戦略カスケードマップ / 協働の窓 |
研究実績の概要 |
今年度の研究では,管理会計技法であるバランス・スコアカードや戦略カスケードマップが,産業クラスターでの戦略的協働の実現すなわちイノベーションの創出を促すひとつの「装置」となる可能性を示した。産業クラスターにおいて自然的に発生した戦略的協働によるイノベーションを,バランス・スコアカードの構成要素である戦略マップによって人工的に起こす方法を模索した。 まず,産業クラスターを戦略的協働を行う組織体として位置づけ,そのような組織体におけるイノベーション創出のメカニズムが経営学でいう協働の窓モデルで説明できることを明らかにした。そして,戦略マップが,協働の窓の開放とその同期をいかに促進するのか,ということを検討した。そして,産業クラスターにおいて作成された戦略カスケードマップが,産業クラスターにおける協働の窓の開放とその同期を促進し,イノベーションを創出することに役立つのか,ということに対して,一つのモデルを提示した。そのモデルでは,産業クラスターに参加している企業とそれを支援する組織という二つの組織において戦略カスケードマップが形成されている場合,支援組織の「人材と変革の視点」および「内部プロセスの視点」が,上位カスケードである参加企業の「人材と変革の視点」とリンクすることで「組織のやる気の窓の開放」を促すこと,それと同時に支援組織における「顧客の視点(クラスター内企業の視点)」と参加企業の「内部プロセスの視点」がリンクすることで「解決策の窓の開放」が起こり,それが結果として産業クラスター内での「戦略的協働」の実現につながる,ということを描写している。 現在,産業クラスターに対する管理会計導入の研究はほとんどない状態にある。本年度の研究がその端緒となる可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では,管理会計の存在が,いかにして産業クラスターにおけるイノベーション創出を促進するのか,という点に対して,管理会計手法の一つである戦略カスケードマップが,協働の窓を開放し,戦略的協働を実現させるために有用であり,それを説明する理論モデルを構築することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では協働の窓モデルと戦略カスケードマップの理念的なつながりを示した。今後の研究では,①誰がクラスター全体の戦略を個々の参加組織にカスケードするのか,②誰が戦略カスケードマップを構築し運用するのか,③どのレベルの組織までマップをカスケードするのか,④戦略マップ間のリンクはどのように果たせばよいのか,などの点を明らかにする必要がある。 そのため,産業クラスターの成功事例を文献資料やインタビュー調査でさらに収集した上で,その成功要因を分析する。その成功要因を踏まえ,上記の①から④までの課題を克服するための理論を考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたフランス・ブルゴーニュ州における調査が,先方とのスケジュール調整がうまくいかずに実現しなかったためである。 今年度はフランス・ブルゴーニュ州において現地の産業クラスターの調査を行うため,次年度使用額を用いる計画である。また,中国における産業クラスターの調査に用いる計画である。
|