本研究では、グローバルに経営を展開する日本企業の本社によるグローバル事業戦略の実行に焦点を合わせる。このグローバル事業戦略の実行では、工場の海外移転をはじめとする投資意思決定のための会計情報の利用が不可欠である。この国際的な意思決定会計の実務展開確認と理論モデルの構築を行うことが、本研究の課題である。 上記の研究課題の解明に向けて、当初作成した「研究実施計画」に基づき研究を遂行した。ここでは、理論研究と実践に関する調査の2つのアプローチを採る。また、企業の経営管理の問題を扱うことから、管理会計による投資意思決定会計の情報作成の前提となる、経営学の研究についても再検討することとした。このことにより、会計情報の前提となる、企業のグローバル戦略に合致した投資意思決定会計モデルの構築を目指すことができる。 上記に取り組むため、研究実施の各年度に、国際セミナーでの研究報告や論文作成などを行った。初年度には、意思決定のための会計情報作成について、理論的に改めて経営戦略の視点から検討した。そこで、現状では企業の実務を説明する経営戦略の研究の進展があるが、意思決定会計には十分に反映されていないことが判明した。第2年度には、いくつかの日本企業を訪問し、その意思決定会計について確認することができた。この実務確認に対し、研究成果として、戦略的意思決定会計は、実務での各種手続き重視や数値目標達成に拘束されることで、理論的なモデルの適用が困難であることが判明した。最終年度には、理論と実務の研究の取りまとめを行った。とりわけ、グローバル戦略に基づく事業の推進に関し、日本企業に多いグループ経営の視点も重要であることが確認できた。グループ経営での意思決定状況に応じた、戦略対応型の意思決定会計情報が必要であることが明らかになった。さらに、このことに併せて今後の課題を認識することができた。
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