研究課題/領域番号 |
16K03983
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
竹島 貞治 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (50312533)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多欄式財務諸表 / 事象理論 |
研究実績の概要 |
本年度は、多欄式財務諸表の基礎となるSorterの事象理論について、Sorter(1969)において欠落していた部分のうち、とくに複式簿記の記録プロセスに関する見解をSorterのその他の著作によって補うことによって考察し直し、Sorterの会計理論における多欄式財務諸表への論理展開について考察を行った。その結果、Sorterは会計測定の一連のプロセスや価値変動の問題について、事象(フロー)の観点から一貫した論理展開を図っているということを明らかにした。本研究成果については、『産業経理』第78巻第3号において発表した。 また、事象理論における多欄式財務諸表の意義を究明するため、事象理論と収益費用アプローチ、Schmalenbachの動的貸借対照表の相違点についてそれぞれ分析を行うとともに、再測定の概念についてフローの観点から考察を行った。 さらに、事象理論における多欄式財務諸表モデルをASOBATモデルおよびBarker(2004)モデルと比較した。その結果、ASOBATモデルはストック概念を中心としたものであること、Barker(2004)モデルは損益計算書を中心としたものであることを明らかにするとともに、事象理論における多欄式財務諸表モデルはフロー概念を中心とし、かつ、貸借対照表と損益計算書の両方を対象にしたモデルであることを明らかにした。本研究成果については、『会計』第194巻第1号において発表した。 上記の研究成果については、日本会計研究学会、アメリカ会計学会(AAA)、および国際会計教育研究学会(IAAER)において発表し、有益なフィードバックを得た。英語論文については、目下、Accounting Historians Jounralに投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、事象理論に基づく多欄式財務諸表を構築するため、5つの課題を設定した。現在までに、第1課題「多欄式財務諸表の目的と方法の解明」、第2課題「多欄式財務諸表のベースとなる会計理論(事象理論)の要素の発展」を終了し、現在、第3課題として設定した「公正価値会計データの対象範囲の特定」、および、第4課題「多欄式財務諸表モデルの作成」に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、G. H. Sorter教授との共同研究を継続することによって多欄式財務諸表のベースとなる事象理論の要素を発展し、多欄式財務諸表の作成メカニズムについて構造的な側面から議論を展開していきたいと考えている。また、多欄式財務諸表について実証研究を行ったTarca et al.(2007)を手がかりにして、多欄式財務諸表のコストとベネフィットについて検討していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:予定していたヨーロッパ会計学会への参加を取りやめたため。 使用計画:今年度予定しているアメリカ会計学会への渡航費に使用する予定である。
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