研究課題/領域番号 |
16K03985
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 秀樹 京都大学, 経済学研究科, 教授 (80173392)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コンバージェンス / 会計基準 / 会計教育 / 会計制度 / 会計理論 / 比較制度分析 |
研究実績の概要 |
第2年度(平成29年度)は,研究計画調書に記載した研究計画に基づき,会計学領域のトップジャーナル3誌のうち“Journal of Accounting Research”における2013~2015年の3年間の掲載論文93本の全数調査を行った。この調査は,第1年度(平成28年度)の調査の精緻化を図るための予備調査として取り組んだものであり,研究における理論の利用を,(1)数理モデルから展開したもの,(2)理論固有の用語を明示したもの,(3)定評ある先行研究を踏まえたもの,(4)仮説のみ提示したもの,(5)その他に分類して,集計した。その結果,(1)0本,(2)11本,(3)12本,(4)49本,(5)21本であることが明らかになった。この結果から理解されるのは,第1に2001~2005年当時優占していた価値関連性分析が衰退し,それに代わって仮説検定型研究(その限りでのエージェンシー費用分析)が台頭してきたこと,第2に事象の因果関係を普遍化した理論を利用した研究(上記の(1)(2)(3))は少数にとどまることである。 以上の研究と並行して,財政逼迫と少子高齢化が同時進行する経済社会環境のもとで大掛かりな制度改革が断続的に実施されている非営利組織の会計制度について,比較制度分析(CIA)に依拠した研究を行った。その結果,非営利セクターにおける横断的な資源配分を効率化する上で非営利組織の財務内容を透明化する必要性が従来にも増して高まっていること,その必要性に応える形で会計基準の「企業会計との同型化」が進んでいること,その一方で非営利組織における財務状況の標準状態を示すものとして損益均衡(収支相償)を位置づける制度設計が広く実施されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたジャーナル調査に基づく研究成果の一部を「会計理論の多様性と科学性―歴史的考察を交えて―」『会計理論学会年報』(第31号,2017年,102‐111頁,査読有)として公表した。また,非営利組織会計の研究成果の一部を,日本会計研究学会第76回大会統一論題における解題・問題提起,日本私法学会第81回大会シンポジウムにおけるコメント,「非営利法人会計制度の回顧と展望―公益法人会計基準の検討を中心に―」『非営利法人研究学会誌』(第19号,2017年,1-11頁,査読無),「医療福祉事業と非営利組織会計―解題と問題提起―」『會計』(第193巻第2号,2018年,51-65頁,査読無)として,公表した。さらに,本研究の成果の教育における普及を目指した単著『入門財務会計』のアップデート版(第2版)を刊行した。
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今後の研究の推進方策 |
第3年度(平成30年度)は,第1~2年度(平成28~29年度)の成果を踏まえ,研究の完成を目指す。そのために,第2年度の研究では先送りとしたトップジャーナル2誌(Accounting Review, Journal of Accounting and Economics)について,第2年度と同様の研究方法に基づく調査を行い,会計研究における理論の利用とその研究上の含意について知見をまとめる。その際,アメリカ会計学会における会計理論研究の1つの到達点を示す文献であるAAA[1977],Accounting Theory and Theory Acceptanceでの議論との関連性に留意した論点整理を合わせて行う。以上と並行して,非営利組織会計における制度変化の実態分析を行い,その含意をCIAに依拠して明らかにする。
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