研究課題/領域番号 |
16K03991
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
庵谷 治男 長崎大学, 経済学部, 准教授 (20548721)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 会計ルーティン / 管理会計システム導入 / 制度論 / 知識移転理論 / ケース・スタディ / アメーバ経営 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,管理会計システムの導入プロセスにおいて,会計ルーティンが組織間でどのように移転し制度化されるかをケース・スタディを用いて明らかにすることである。会計ルーティンとは,管理会計実践(行為の再現を含む)として定義している。また,分析視座として制度論や知識移転理論から「情報の粘着性」「吸収能力」「対立」といった概念を援用することを考えている。 本年度は初年度であり,リサーチ・サイトの候補を理論的サンプリングによって探索する一方で,分析視座を構築するために制度論や知識移転理論に関する資料収集およびレビューを実施した。なお,制度論に関する知見は研究代表者が執筆した庵谷治男(2013)「制度論的パースペクティブに基づく管理会計研究の可能性」『早稲田商学』438号, pp.473-506で整理した内容を積極的に活用し,さらに必要な情報を探索している。 また,以前より進めているアメーバ経営導入のケース・スタディのなかで,導入にあたり親会社からアメーバ経営のルールとルーティンが導入組織へ移転されていることを確認し,整理している。それに関連した成果としては澤邉紀生・庵谷治男(2017)「部門別採算制度が経営理念に及ぼす影響―ホテルにおけるアメーバ経営の事例」アメーバ経営学術研究会編『アメーバ経営の進化:理論と実践』中央経済社, pp.61-100.のなかで一部とりあげている。とくに,部門によって会計ルーティンが根付くまでに相違があり,人的要素(能力,知識,経験など)や組織構造と管理会計システムとの関係性などが影響している可能性を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度は研究代表者の博士学位論文の執筆に上期の時間を大幅に費やした(2016年11月に提出し,現在は審査中)。その結果,本研究に実質的に着手可能となったのは下期からである。ただし,本研究は研究代表者のこれまでの研究(とくに,管理会計システム導入に関する研究)と関連性が高いため,これまでのレビューで得られた知見をベースにさらに情報の収集を行い,また学位論文でも対象となったケース・スタディのなかで本研究に関連した内容について吟味する時間を設けて,本研究に関連した研究活動も行うよう心掛けた。よって,必ずしも当初の研究計画通りとはいかないまでも,やや遅れている程度で研究は進行していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として,優先事項はリサーチ・サイトの確定である。理論的サンプリングによってある程度候補像は固まっているものの,具体的なリサーチ・サイトが確定しているわけではない。研究計画に示したように,アメーバ経営の分やで実務家とのつながりがあることから,その人脈を生かしながら今後早い段階でリサーチ・サイトを確定し,実際に会計ルーティンの移転を観察していきたい。ただし,企業の状況によっては必ずしも計画通りに進まないことも十分に予想されるため,引き続きこれまでのリサーチ・サイトと良好な関係を築きながら,継続的な調査も合わせて検討している。 くわえて,先行研究のレビューに関してはこれまで手薄の知識移転理論について,国際経営に関する書籍および論文を読み進め,情報の整理に努めたい。また,理論の応用可能性についても,管理会計研究への貢献を意図した論文として研究会ならびに学会などの場で成果を発表していく考えである。
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次年度使用額が生じた理由 |
リサーチサイトの探索のために予定していた旅費および文献収集にかかる書籍代等について当初の計画よりも支出が少なかった次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次期はリサーチサイト探索のための旅費および資料収集のための費用として前年度と同様に支出を予定している。
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