研究課題/領域番号 |
16K03991
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
庵谷 治男 東洋大学, 経営学部, 准教授 (20548721)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 管理会計 / 知識移転 / 管理会計ルーティン / 事例研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、異なる組織間でみられる管理会計ルーティンの移転プロセスにおいて、移転に与える影響要因を探究することである。本年度は主に文献研究ならびに聞き取り調査を実施した。文献研究では知識移転プロセスおよび管理会計ルーティンに関する研究を中心にレビューした。知識移転プロセスでは、Szulanski(1996)が示した知識移転プロセスは知識が送り手から受け手へ移転され制度化(ルーチン化)されるプロセスを描出しており、本研究の関心とも極めて適合性が高いと確認された。また、管理会計ルーティンに関しては、van der SteenやQuinnらの研究で採用されている、ostensive routine(ルールなどに組み込まれた規範的な側面)とperformative routine(ルールに従って実際に行われた目に見える活動そのもの)の概念が管理会計ルーティンの解釈には重要であるとの知見をえることができた。一方、聞き取り調査ではアメーバ経営導入を行ったR社および同社へのコンサルティングを行った京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下、K社)にも聞き取りを実施した。具体的には①2019年6月10日、R社管理部経営管理グループ執行役員A氏、②同年6月19日、R社管理部経営管理グループ会議への出席(出席者はA氏、経営管理チーム部長B氏、同課長C氏、標準推進室D氏、コンサルタントE氏、F氏(テレビ会議での参加))、③同年6月27日、K社のG氏、H氏である。現在は知識移転プロセスのフレームワークを援用しながら、R社の事例分析を行っているところである。合わせて、文献調査から得られた理論的視座と聞き取り調査から得られたエビデンスを突き合わせながら、管理会計ルーティンの移転に関する理論的フレームワークを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れているとの認識は、2020年2~3月に予定していた聞き取り調査の継続願いについて世情を鑑み断念せざるを得なかったことに起因する。とりわけリサーチ・サイトは飲食業界に属する企業であり、調査の再開は当面難しい状況である。しかし、同時期に追加の文献調査を実施したため、研究全体としては大幅な進捗の遅れとまでは至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は本研究課題の最終年度にあたる。本研究の総括として、文献調査で得られた理論的視座をベースに聞き取り調査で得られたエビデンスを分析していく計画である。ただし、進捗状況でも報告したように、聞き取り調査が現在中断という状況にある。また、代替的なリサーチ・サイトについても模索中である。2020年度の始まりは社会全体で危機的状況にあるため、調査がいつどのような形で再開可能か未定であるため、リサーチ・サイトの追加等も視野に入れながら対応策を練っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況がやや遅れている理由としてもあげた、聞き取り調査の実施中断による旅費交通費の支出減少が原因として指摘できる。このため、2020年度に聞き取り調査が再開できるようにリサーチ・サイト(代替案も含む)への協力を再度仰いでいく。
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