研究課題/領域番号 |
16K03995
|
研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
佐々木 郁子 東北学院大学, 経営学部, 教授 (90306051)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 顧客関係性 / ロイヤリティプログラム / 原価態様 / 収益管理 |
研究実績の概要 |
本年度は,研究課題1「顧客関係性戦略とロイヤリティプログラムの設計,評価および業績への影響」について,50室以上の客室を有する日本の宿泊業に対してアンケート調査を行った。その中でも100室以上の宿泊施設について分析を行った。その結果,いずれの業態(シティホテル,ビジネスホテル,リゾートホテル,日本旅館)でも,来訪頻度の増加に効果があることが明らかになった。また,多くの宿泊施設が新規顧客の確保やリピーターの維持を重視し,一方で,販売促進費用の削減にはあまり効果がないことが分かった。これらの顧客関係性戦略とロイヤリティプログラムの変化を,収益管理の話に合わせて,3rd International Tourism and Hospitality Management Conferenceで報告した。 研究課題2「企業のライフサイクルと顧客関係性戦略に基づく収益・コスト構造の変化」については,B to Bにおける顧客関係性の強さが財務業績にどのような影響を与えるか,および主要顧客企業がサプライヤーの株式を所有することによるサプライヤーの財務業績への影響を分析した。その結果,主要顧客との取引については,日米とも一般的であるが,主要顧客がサプライヤーの株式を所有することは日本企業の方が米国よりもかなり多いことが明らかになった。また,主要顧客の依存度が高くなると,売上原価率は高く,販管費率は低くなり,棚卸回転率は大きくなることが分かった。一方で,ROAは変化するとは言えない。さらに,主要顧客の株式所有割合が大きくなると,これらの結果がより強く表れることが分かった。課題2については,研究成果を日本管理会計学会全国大会で報告した。また,2018年6月にヨーロッパ会計学会でも研究成果を報告する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1については,昨年度の実施状況報告書で示した通り,調査対象先を変更したが,予定通り質問票調査を実施できた。ただし,ロイヤリティプログラムについては,研究申請時に構想していた状況と大きく変化してしまったため,現状は,収益管理に軸足を置き,限ロイヤリティプログラムの顧客関係性に対する効果の分析は限定的になってしまった。一方で,管理会計学会スタディグループにおける研究で,プロスポーツビジネスの収益管理と,顧客関係性構築についてのヒヤリング調査の実施を開始した。 課題2については,データセットがかなり充実し,分析を加えることによって,欧米の先行研究との比較が可能になった。29年度はB to Bの関係性と財務業績との分析を行い,良い結果を得ることが出来た。 これらの調査結果は,予定通り,学会報告および論文として公表することが出来たので,おおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
29年度に行った質問票調査を分析し,公表していく予定である。ただし,分析対象やテーマが,申請時からの環境変化によって調査が難しいものや,課題自体見直しをして行く必要がある。たとえば,ポイントシステムを利用したロイヤリティプログラムは,電子マネー化と共通化により,その効果自体が分かりにくくなり,もはや複数のポイントシステムをもっている企業も多くなっていることから,この課題は見直す必要がある。顧客関係性との切り口でいうと,収益管理と顧客関係性とでは,29年度に調査した宿泊施設は興味深い調査対象であり,業態の違いと収益管理と顧客関係性とを中心に分析していくことにより,変化プロセスを見て行きたいと考えている。 また,昨年度言及した震災関連の顧客関係性については,危機管理や顧客関係性と危機管理システムという切り口で調査を行っている。こちらについては,事例研究を実施しており,その成果を30年度には示すことが出来ると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2月末の出張旅費の精算が遅れたため。(搭乗予定であった航空機がキャンセルとなり,申請内容と請求内容が異なったことによる精算手続きに時間がかかった。)
|