研究課題/領域番号 |
16K03996
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研究機関 | 尚美学園大学 |
研究代表者 |
越智 信仁 尚美学園大学, 総合政策学部, 教授(移行) (70758771)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 外部性の内部化 / ディスクロージャー論 / 契約理論 / 社会的共通資本 / 統合報告 / 信用外部性 / 監査の失敗 / 公正価値評価 |
研究実績の概要 |
初年度の研究実績として、自然資本会計と統合報告の接合可能性を論じ、そうした開示のロジックを社会関係資本にも展開したうえで、同様の開示規律が、金融機関における信用外部性や監査報告書におけるKAM(監査上の主要な事項)の開示においても有効であることを明らかにした。 まず、自然資本との関係では、自然資本連合による国際プロトコルの発表(2016年7月)を受け、自然資本会計のビジネスへの適用可能性を踏まえつつ、統合報告との接合可能性を論じた。また、社会関係資本との関係では、近隣諸科学分野でのソーシャル・キャピタル論に係る先行研究を踏まえ、会計上のインタンジブルズとの異同を明らかにし、その外部性である「ダークサイド」の会計学(および統合報告論)への含意を導出した。 次に、制度資本の外部性問題として、金融バブルを俎上に載せ、その生成過程において金融機関は、公害を垂れ流すようにリスクを増殖・拡散する収益競争に明け暮れた結果、全体として社会に許容不能なリスクが顕現化し個々の経済主体をも巻き込むことになる。その意味では、公害を含めた自然資本等の外部性問題と類似した構造を有しており、広範なリスク情報開示とその自己規律効果という開示フレームワークが、金融バブルという外部性の制御に向けても有効であることを論じた。 また、粉飾を見逃す監査の失敗により、事後的に投資家のみならず社会が多大なコストを余儀なくされるが、「インセンティブのねじれ」もあって、監査契約における報酬決定、その後の追加的監査時間の投入が、事後的な社会的コストを本来カバーして然るべき水準に達していない可能性がある。こうした外部不経済の是正に向けて、情報の非対称性緩和に向けた監査人によるKAM(監査プロセス情報)の開示を梃とし、これが企業側のリスク情報開示を促すといったインセンティブの循環を作動させることが有効であることを論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
骨格となる基礎研究は初年度段階で全体を概ねカバーし、当初は2年度目に予定した研究も前倒しで実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度での研究成果の書籍出版に向け、2年度目は、研究成果の内外学会での発表とともに、内容の掘り下げや細部の論点の拡張、理論的バックグラウンドの補強など、発展的なグレードアップに注力していきたい。そのうえで、3年度目の早い段階で研究成果を書籍原稿の形で完成させ、細部の詰めの作業に移りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね端数処理圏内の残余。
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次年度使用額の使用計画 |
端数部分は新年度入り直後に使用済。
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