研究課題/領域番号 |
16K03997
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
中島 真澄 千葉商科大学, 会計ファイナンス研究科, 教授 (90249219)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 不正のトライアングル / 経営者の裁量行動 / 利益の質 / 会計的裁量行動 / ガバナンス / 実証分析 / サーベイ調査 |
研究実績の概要 |
本研究は、ガバナンスの改良が経営行動に影響を与え、結果的に財務報告の質を向上させるのかを解明することを目的としている。第1の目的であるガバナンスと経営行動との関連については、2017年度はCressey (1953)の the Fraud Triangle theory に依拠して財務目標、収益性をプレッシャー変数に、ガバナンスを機会変数に、裁量的発生高や会計発生高絶対値、監査人の意見を正当化変数とした回帰モデルで1期先の財務諸表不正を予測可能かどうか検証した。その結果、財務目標および収益性(プレッシャー)、効果的でないガバナンス(機会)、経営者の裁量行動(正当化)が一期先財務諸表不正と有意な関連性あることが導出され、このことから不正企業経営者は、会計発生高を用いて裁量行動を行っている可能性があることが分かった。当該研究は、ICIBS2017(バリ、インドネシア)、アジア・パシフィック管理会計学会(上海交通大学、中国上海市)、The Japanese Accounting Review (TJAR)での報告が受理され、報告した。ICIBS2017ではBest Paper Awardを受賞したのも、本科研費研究をさらに推進するための原動力となった。第2の目的である、経営行動の背後にある動機は何が誘因要因であるのかを解明するために、日本の上場企業にサーベイ調査を実施してガバナンスの実態および経営者のガバナンスに対する意識をたずねた。質問票の回答結果から、経済業績を不正表示する企業の動機については、日本企業経営者は、目標利益を達成するための組織内外からのプレッシャーという心理が動機になっていることがわかった。また、日米企業経営者ともに、それぞれ利益とキャッシュ・フローの乖離を会計不正につながる危険信号と最も多く示していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、研究期間において、ガバナンスと財務報告の質との関連性【課題A】、日本企業における経営行動の変化の決定要因【課題B】、監査の質と経営行動との関連性【課題C】という3つの具体的な論点を解明するものであった。研究初年度である28年度は、第1の目的として取締役会の独立性や資質、監査等委員会の独立性や資質を変数として、経営行動との関連性分析を実施した。29年度は、第2の目的として経営行動の背後にある動機付けは何が誘因要因であるのか、何が抑制要因になっているのかを解明することであった。課題Bを遂行するため、サーベイ調査、すなわち、質問票の作成、質問票送付、サーベイ調査回答結果の解析まで実施することができた。29年度は、課題Aの論文化と行うとともに、国際学会でも報告できた。また、課題Bについてもサーベイ調査の統計解析結果を論文化し、日本と米国の学会で報告することになっている。したがって、本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は、経営者のガバナンスに対する意識および現状に関する質問票回答測定値と、財務データとを融合させた研究を行う。研究の方法としては、経営者のガバナンスに対する意識をサーベイ調査結果からNakashima and Ziebart (2016)のアプローチで経営行動を定量化したものと、財務データからの経営者の裁量行動とを融合させることによって、会計不正の背後にある3つのファクターを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度は、当初、ガバナンスデータは市販のデータベース購入を計画(1.2百万)していたが、アルバイトによる手入力でのデータベースの作成としたため、費用が削減できた。また、サーベイ調査質問票印刷を相見積もりとして予定よりも低価格となったため、結果的に費用が削減できた。しかしながら、30年度は、第1に、日本経営分析学会で海外研究者(Professor Dennis Huber)を招聘して特別講演を実施することになっているため、渡航費、宿泊費、報酬等を支出する予定である。第2に、2018年度アジア・パシフィック管理会計学会においてサーベイ調査回答者である財務担当最高責任者(CFO)のセッションを設定することになり、当該セッションに関わる諸費用も支出予定である。当該2つの計画により、使用額が生じることになった。
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