研究課題/領域番号 |
16K03998
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
町田 祥弘 青山学院大学, 会計プロフェッション研究科, 教授 (50267431)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 監査の品質 / 監査の品質指標 / 監査時間 / 監査報酬 |
研究実績の概要 |
本研究は、従来、外部から把握することができないとされてきた「監査の品質」について、監査人に各種の測定指標の開示を義務付けようとする海外の動向を背景として、監査の品質に関する測定指標の枠組みについて、理論的及び実証的に検討し、わが国の監査環境において適用可能な監査品質の測定の枠組みのあり方を検討することを目的としている。 研究代表者は、平成26年度及び平成27年度において、挑戦的萌芽研究として、「わが国及び海外における監査時間の実態調査」に取り組んできたが、監査時間もまた、監査の品質に関する有力な測定指標の1つである。本研究は、挑戦的萌芽研究で取り組んできた監査時間の研究を監査の品質に関する測定指標全体に広げて、研究の進展を図るものである 2016年度は、まず、主に文献考察を通じて、監査の品質に関して、先行研究において監査品質の代理変数(サロゲート)として利用されている測定指標や各国の公的機関等から提唱されている測定指標を網羅的に取り上げ、それらの指標が示された理論的及び制度的背景、ならびに、先行研究における結論等を整理することから始める。同時に、監査というサービスの品質について、経済学等のサービス論を援用して、監査品質の測定の基礎となる枠組みの検討を進めてきた。 その焦点は、監査品質に関する各種の測定指標が、監査の品質を高めることに有用であるのか、あるいは、わが国の監査の制度や実務において適用可能なものであるのかどうかを考察することにある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、次の手順によって進めていくことを計画している。すなわち、①各種文献及び公表データを利用しての監査の品質に関する各種指標の検討、②同様に、海外の制度及び先行研究の現状の把握、③わが国の監査法人及び監査人等へのヒアリングによる実態調査、④海外(アメリカ、英国、フランス、ドイツ)の会計事務所及び監査人等へのヒアリング等による実態調査、⑤わが国の監査法人及び監査人等へのアンケート調査、及び⑥上記の①~⑤を踏まえた、わが国の監査環境に適する監査の品質の指標及び枠組みの検討である。 このうち、2016年度は、当初計画としいて、①から④までを予定していたが、④において海外のヒアリングの実施が一部の国に限られたことを除いて、概ね順調に進めることができた。 まず、①及び②の文献考察については、監査の品質に関して、先行研究において監査品質の代理変数(サロゲート)として利用されている測定指標やアメリカのPCAOBから公表されている監査品質指標等を網羅的に取り上げ、それらの指標が示された理論的及び制度的背景、ならびに、先行研究における結論等を整理した。同時に、監査というサービスの品質について、経済学等のサービス論について文献考察によって検討し、今後の監査品質の測定の基礎となる枠組みの構築の端緒とするべく考察を進めた。 また、③及び④のヒアリング調査では、そうした理論的な考察を背景として、監査品質に関する各種の測定指標が、監査の品質を高めることに有用であるのか、あるいは、わが国の監査の制度や実務において適用可能なものであるのかどうかを検討すべく、内外の監査事務所及び監査人に対するインタビューを実施した。 海外での調査は、アメリカと英国に限られることとなり、ドイツとフランスは次年度へ繰り越すこととなったが、実施したアメリカと英国については、予定していたヒアリング項目は実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、2016年度に実施したヒアリング調査の結果や、それを基に作成したワーキング・ペーパーの配布を通じて収集した意見等を踏まえて、わが国監査法人を対象としたアンケート調査を実施したい。調査対象は、わが国の監査法人及び監査人を対象としたアンケート調査を実施したい。監査を実際に担当する公認会計士及び監査法人に対して、監査の品質指標によって測定される側の意識及び監査の品質指標への監査法人における対応の可否等を把握することとしたい。 すでにヒアリングによって、一定のパイロットテストは済んでいるものと考えられることから、アンケートの集計結果は、大量データとして、統計的に処理して、実証的に分析することとしたい。 また、初年度に引き続いて、文献・資料の渉猟によって、内外の監査に関連する資格・試験及び教育に関する文献考察を進めることとする。さらに、海外の調査のうち、初年度に実施できなかったドイツ及びフランスについても、実態調査の前提となるヒアリングに再度チャレンジすることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外でのヒアリング調査が、アメリカ、英国、ドイツ、フランスのうち、アメリカ及び英国に限られたことによるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のヒアリングは、次年度に繰り越したものであることから、研究費の制約の範囲内で、次年度において実施する予定である。
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