研究課題/領域番号 |
16K04001
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
太田 康広 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 教授 (70420825)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 企業価値評価 / 時系列特性 |
研究実績の概要 |
日本の四半期の親会社株主利益と株主資本データをもとに、EBITDA(税引前利払前減価償却前償却前利益)の前年同期比の成長率がどのような時系列特性を示すのかを調査した。具体的には、四半期EBITDAの年間成長率が1四半期前の四半期EBITDAの年間成長率に影響を受けるものとして定式化している。四半期EBITDAは、四半期親会社株主利益に定数項を加えたもので近似している。また、四半期EBITDAに指数を付けて、挙動に柔軟性を与えた。また、四半期EBITDAの年間成長率は、株主資本の成長率にも影響を受けることが予想されるので、1四半期前の株主資本の成長率を説明変数に(乗法的に)加えてある。株主資本の挙動にも柔軟性を与えるため、同じように指数を付けてある。親会社株主利益に加える定数項は、企業ごとに自由度調整済み決定係数を最大化するように決定している。 株主資本の時系列特性を調べるため、指数で柔軟性を与えた四半期株主資本の年間成長率が、1四半期前の同じ比率と指数で柔軟性を与えた四半期EBITDAの成長率で説明されるモデルも検証した。株主資本のダイナミクスでは、四半期EBITDAの成長率は統計的に有意にならないこと多いなど、大きな役割は果たしていない。 四半期EBITDA予測モデル、四半期株主資本予測モデルは、標本外のデータに対して、その変動の9割前後を説明するなど、予測モデルとしての精度は十分である。 しかし、クリーン・サープラス関係を使って、配当割引モデルに代入して予測される理論的な時価総額を、実際の時価総額と等しくする株主資本コストが50パーセントを超える場合が多いなど、モデルの記述的妥当性が疑わしい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本のデータに対して、理論的に予想された結果がうまく当てはまらない。
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今後の研究の推進方策 |
日本のデータに基づいた四半期EBITDA予測モデルや四半期株主資本予測モデルの予測精度が良好なのに、配当割引モデルとクリーン・サープラス関係を仮定した時価総額予測モデルの当てはまりがよくない。これが、日本の株式市場の特殊性によるものなのかどうかを検証するため、たとえば、アメリカのデータで検証する必要がある。また、配当割引モデルを対数正規化することに一定の意味があるかもしれない。増減資の影響を考慮することも考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
授業やセミナーなどの校務と重なり、予定していた国際学会に参加することができなかったため、未使用額が生じている。次年度は、できるかぎり参加する予定である。
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