研究課題/領域番号 |
16K04004
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
丸山 佳久 中央大学, 経済学部, 教授 (10342312)
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研究分担者 |
植田 敦紀 専修大学, 商学部, 准教授 (50591575)
八木 裕之 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (60210217)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メソ会計 / メソ環境会計 / 環境会計 / 環境フットプリント / 環境評価 / 地域的サプライチェーン / 産業クラスター / 遠野地域木材総合供給モデル基地 |
研究実績の概要 |
2016年度は、次の3点について調査を実施した。1つ目は、統合報告・サステナビリティ報告等をつうじグローバルSCにおける自然資本の取り扱いを調査した。企業活動における外部性のうち自然資源にフォーカスし、自然資本として評価・測定した上で内部化する必要性・可能性を検討し、研究成果を論文としてとりまとめ公表した。 2つ目は、木材及び木質系バイオマス(木材等と略す)の地域的サプライチェーン(SC:supply chain)・産業クラスター(SC・クラスターと略す)のケースとして、岩手県遠野市と紫波町をフィールドワークによって調査した。具体的には、遠野市では遠野市林業振興課、(協)森林のくに遠野・協同機構、(株)リンデンバウム遠野等、紫波町では紫波町環境課、(一)紫波町農林公社、紫波グリーンエネルギー(株)等に対して、経営者に対するヒアリング調査と工場設備等の実地調査を行った。主として紫波町の木質系バイオマス事業の調査に基づき、メソ会計のモデル化と実践的適用に関する研究成果を論文としてとりまとめ公表した。 SC・クラスターの実地調査から、本研究では、遠野市の遠野地域木材総合供給モデル基地(遠野木工団地と略す)をケーススタディの対象とすることを決めた。そして、3つ目の調査として、遠野木工団地が生まれた背景や、SC・クラスターにおける事業者間の取引関係等を調査した。遠野木工団地における調査事項を部分的に取りまとめ、林業・木材産業を動脈SC、木質系バイオマス事業を静脈SCと捉える形でメソ会計モデルを拡張し、2017年度に研究成果を論文として取りまとめ公表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度の計画としては、環境フットプリント(EP: Environmental Footprint)の理論研究への着手、統合報告・サステナビリティ報告等をつうじたグローバルSCにおける自然資本の取り扱いに関する理論研究・事例収集、ケーススタディの対象となる木材等のSC・クラスターのフィールドワーク等であった。これらのうち、EPの理論研究が若干遅れ気味であるが、フィールドワークは当初の想定以上に順調に進展した。具体的には、岩手県遠野市では、森林のくに遠野・協同機構を構成するほぼ全ての事業者に対して研究プロジェクトの概要を説明し、事業者の経営者・管理者から理解と協力を取り付けた。そして、ケーススタディの対象を岩手県遠野市の遠野木工団地に決定することができた。また、2017年度の研究計画としていた事項、すなわち遠野木工団地が生まれた背景や、SC・クラスターにおける事業者間の取引関係等に関して、調査に着手することができた。これらの調査の研究成果の一部は論文として取りまとめ、紀要を中心に、複数の学術雑誌にて公表するように推し進めた。このように、トータルでみれば、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策は、2017年度の当初の研究計画のとおり、メソ会計やEPの理論研究を継続するとともに、遠野木工団地でのフィールドワークを推し進める。そして、林業の活性化及び木材等の利活用がSC・クラスター全体におよぼす影響を経済的・環境的・社会的に「見える」ようにできるメソ会計のモデル化を開始する。具体的には、2016年度に、遠野木工団地を中心とするSC・クラスターにおける事業者間の取引関係等をマテリアルフローベースで調査したが、この調査を2017年度は推進し、取引価格や関連するコスト等の経営情報をあわせて収集する。このように収集した事業者別のマテリアルバランス・取引価格・経営情報をマトリックスの形でメソ会計として整理していく。また、林業の活性化及び木材の利活用が地域におよぼす環境的・社会的な影響を評価できるように、環境影響評価手法や社会指標等に関して先行研究・事例を収集する。 メソ会計モデルと整理したデータをもとに、遠野市林業振興課や遠野木工団地の事業者等に対して、説明会・意見交換会を実施する予定である。また、研究成果は国内学会の全国大会で発表しするとともに、論文として取りまとめ学術雑誌への投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費に関して、当初の予算では、主として、研究計画のサーヴェイの対象となる研究資料の購入、フィールドワークの際に持ち運ぶノートパソコンを目的とした設備備品費、雑誌やPC・映像関連の消耗品として計上していた。これらに基づいた2016年度配分額に対して、ウエッブを通じて想定よりも割安に各種の関連資料や消耗品が入手できたため、物品費の実支出額が予算額を下回った。 旅費に関しては、当初は岩手県遠野市・福島県会津若松市・大分県日田市等でのフィールドワークを予定していたが、遠野木工団地での調査が当初の想定以上に順調に進んだため、遠野市をケーススタディの対象地域として早い段階で決定できた。そのため、遠野市に対するフィールドワークを複数回実施する形になり、当初の予算額を下回った。 人件費・謝金等については、当初の予算には計上していなかったが、フィールドワークにあたって手土産代等が生じたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費について、当初の計画のとおり、環境会計・EP・製品ライフサイクルアセスメント等に関する図書や雑誌、PC・映像関連の消耗品の収集のために活用する。その際、上記の理由で2016年度から繰り越した金額は、研究の推進に必要な関連資料・消耗品の購入にあてる。また、研究を進めていく上でフィールドワークの際に手土産代等が生じることが明らかになったため、人件費・謝金等に流用して活用する。 旅費については、国内旅費として遠野市に対する複数回のフィールドワークと学会発表、外国旅費として海外における木材等のSC・クラスターの先進地域の調査を計画している。遠野市に通うことで遠野木工団地の事業者との関係を円滑にして、研究の推進が図れるようにする。また、国内及び海外での学会での資料収集のための旅費としても活用する。
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