国際会計基準審議会のHoogervorst会長は,2016年3月に,国際会計士連盟が管理・運営するwebsiteにShining the Light on Leasesと題する記事を掲載し,次のように述べた。IFRS16:Leasesの適用によりリース負債がオンバランス化されても,借入コスト,財務制限条項に深刻な影響は生じない。IFRS16は,取引の実態を忠実に描写し,比較可能性を向上させるであろうし,物件をリースするか,購入するかについての企業の判断,投資家の意思決定にも役立つ。 Hoogervorst会長が主張するとおり,IFRS16が財務諸表の利用者である投資家,作成者であるリース契約における借手と貸手に対し,便益をもたらすかについて,借手と貸手の会計処理の対称性の視点から検討した。 原資産にかかるリスクと便益が貸手に留保されていれば,履行義務アプローチを適用し,そうでなければ,認識中止アプローチを適用する。借手と貸手の処理の対称性を保つには,履行義務アプローチを採用し,履行義務を果たすにつれて,収益を認識し,原資産の減価償却を行うべきである。 Demerjian(2011)などにより,財務制限条項の中に貸借対照表項目(レバレッジ,純資産,流動比率など)が含まれる比率が著しく減少したが,損益計算書項目(インタレスト・カバレッジ,純利益/負債など)が含まれる比率は,大きく変動してはおらず,それは,金融資産,のれんなどに公正価値測定の対象範囲が拡大したこと,換言すれば,貸借対照表アプローチの重視に起因することが明らかとなった。
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