本研究は、介護サービス事業者の経営状態を、事業体外部者が判断できるような会計情報の在り方(内容、公開方法)について、日本、アメリカ、オーストラリアの比較を行いながら検討するものである。研究3年度目にあたる平成30年度においては、「理論」についてはオーストラリアの会計基準・規準について、「実務」についてはアメリカでの研究者・実務家に対するヒアリング、「開示手段」については開示の理論的側面(開示の必要性の根拠等)と開示情報の分析の各事項について研究を推進した。その概要は以下のとおりである。 オーストラリアの会計基準・規準については、引き続きオーストラリアのサザンクイーンズランド大学の研究協力者より情報提供を得るとともに、オーストラリア政府の「NPOチャリティ組織白書」や「オーストラリア健康政策コスト」といった情報により、過年度に訪問して得た実地による実情情報を検証するなど確実な情報の蓄積に努めた。アメリカでのヒアリングについては8月にワシントンD.C.で行われたアメリカ会計学会における政府非営利組織(GNP)セッションで、テキサス大学の研究協力者等と、医療・福祉サービスの提供主体の情報開示や補助金の実態、情報開示の根拠等について意見交換を行うとともに資料収集を行った。開示手段については、2019年度から本格稼働した独立行政法人福祉医療機構のWAMネットを利用して、前年度に行ったアンケート調査の情報内容の補強などを行った。 上記の他、日本会計研究学会、非営利組織研究学会などで研究者・実務家と意見交換を行うとともに、研究成果の取りまとめを行い、現在2019年夏の出版を目指して調整中である。なお、研究成果のうち国庫補助金に関わる部分については後述のように学術誌に掲載(7月刊行)予定である。
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