研究課題/領域番号 |
16K04014
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
奥村 雅史 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (30247241)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 開示スコア / XBRL / テキスト分析 |
研究実績の概要 |
ディスクロージャー情報に関するスコア作成のための手法について検討した。その一環として,有価証券報告書における財務諸表に付される注記情報を取り上げ,そこにおける開示状況を検討するため手法を開発するための準備をした。注記情報を取り上げるのは,基本的な内容については制度的に規制されているとともに,その内容において企業が自発的な開示を加えることができるからである。このテーマについては,法的規定とXBRLにおける記述方法ないし表現上の構造との関係を整理し,注記情報の開示レベルに関する尺度を作成するための基礎的な事項を整理した。これらのことは,研究ノート「XBRLによる注記情報の記述について」としてまとめ,これを学内紀要に投稿した。 開示情報に関してスコアリングする方法は,合意された方法が存在するわけではないため,何らかの方法で作成したスコアの妥当性を検討する方法が必要である。この点に関して,スコアの有効性を検証するための手段として情報の非対称の代理変数との相関を検討する予定である。このため,上場企業の株式取引に関するティックデータを購入し,情報の非対称性の代理変数として利用するために,ビッド・アスク・スプレッドの計算をした。 開示スコアに関する研究と並行して,正常な発生項目額を推定するモデルについて検討した。これまでも,このテーマについて検討しているが,本年度においても追加的な知見をえるために,財務データを利用したシミュレーションなどを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開示スコアを作成するための手法の開発に手間取っている。手法について合意されていないために,実証的な妥当性をチェックする準備をする必要があり,そのためのデータ整理および情報の非対称性の代理変数の作成に時間を要している。
|
今後の研究の推進方策 |
注記情報を含めた開示情報の内容には,制度的な規制の変更,ビジネス自体の変容など,多様な要因が影響する。開示レベルを把握することは,制度的な変遷を評価するために必要となるとともに,個別企業の開示における自発的な行動を把握するためにも重要である。制度的な規制の変遷を情報開示の質の側面から検討しようとするためには,どのような開示レベルの尺度を採用するのが望ましいか,また,自発的な開示レベルを検討する場合にはどのような点を対象に自発性を測定することが適切か,といった点につい検討する。これらの目的を一定程度達成できるであろう尺度をXBRLを利用して低コストで計算する手法を開発することを試みる。なお,これに関連して,情報開示のレベルと情報の非対称性との関係を検討する。具体的には,開示状況の実態をまとめるとともに,これに基づく開示スコアを計算し,当該スコアとビッド・アスク・スプレッドとの相関を検討する。 これらに加えて,裁量的な会計決定の結果である可能性がある異常発生項目額を算定するために必要となる,正常発生項目額の推定モデルについて,すでに研究したところをまとめるとともに,シミュレーションによって複数のモデルの優劣を評価する。具体的には,本研究ですでに検討した複数の推定モデルについて再検討し,さらに,可能であれば異なるモデルを提案することを試みる。そのうえで,シミュレーションによって各モデルをその検出力の観点から評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
一部の研究が予定していたよりも遅れているため,アルバイトなどの支出がされていない。遅れた部分については,翌年度に実行する予定である。また,出張が実行できていないことも影響している。
|