研究課題/領域番号 |
16K04022
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
阪 智香 関西学院大学, 商学部, 教授 (10309403)
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研究分担者 |
地道 正行 関西学院大学, 商学部, 教授 (60243200)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 財務ビッグデータ / 可視化 / 探索的データ解析 / サステナビリティ |
研究実績の概要 |
経時観測データである企業財務ビッグデータについて、時系列解析や多変量解析に加え、データの空間的な分布をみるための時系列プロット・対散布図・モーションチャートなどを用いてデータの分布状態を可視化することによって、データ自身のもつ情報を探索的に引き出す、探索的データ解析(Exploratory Data Analysis: EDA)を行った。Bureau van Dijk(BvD)社のOsirisから、全上場企業の財務データを入手し(148カ国・約83,000社・30年分、85項目の財務データ、1.3GB超)、次の研究を行った。 (1)企業財務データによる格差の証拠 Saka and Jimichi (2017)では、①ピケティが示した格差のメカニズム(資本利益率r > 成長性g)が過去30年の企業データでも見られる、②国家間で企業の富が過度に集中し、③ストック(資産)の集中はフロー(利益)の集中より大きい、④企業間格差も拡大傾向にあり、世界全体ではトップ1%(10%)企業の売上占有率は48%(86%)であることを示した。 (2)サステナビリティ、付加価値分配、租税回避 Oshika and Saka (2017)は、100年以上存続する企業では、従業員等のステークホルダーへの付加価値分配率が高いこと等を示した。Saka et al. (2017) は、付加価値分配の税金に着目し、①実効税率(税金費用/税引前利益)が法定税率を下回ること、②各国の実効税率分布を可視化し、租税回避の蓋然性を示した上で、③実効税率は企業のサステナビリティと関連があることを実証分析でも示した。Saka et al. (2018)は、別の方法で①租税回避の証拠を示し、②企業の実効税率の低下と各国法定税率の引き下げ競争によって、過去20年間に双方の税率が世界規模で下方に収斂してきた実態を可視化によって示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Bureau van Dijk(BvD)のOsirisから収集した全世界の全上場企業約83,000社(148か国、1985~2017年の30年超、85項目)の財務データは、CSV形式で1.3GB超、250万行超の大容量のデータであり、通常の(Excel等の)ソフトでは扱いが難しい。そこで、我々は、SparkとHadoopとRを用いてデータを整形・解析することに挑戦し、探索的データ解析を実行した。そして、サステナビリティ、付加価値分配、租税回避等のテーマに関する研究成果をまとめ、2017年度は7回の国内外での学会報告や8本の研究論文の公表に結びつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、BvDのOrbisから、全世界の非上場企業を含む企業約2,000万社の財務ビックデータを収集する(2017年度に試験的に収集したが、再度2018年度に収集を行う)。これは、10年間の財務データであり、108GB超、2億行超となり、通常のコンピュータでは扱えないため、データを整形・解析するにあたり、東京大学情報基盤センターのスーパーコンピュータを利用する。世界規模の財務ビッグデータを用いて、企業活動のグローバル化がもたらす実態等の証拠を、可視化によってわかりやすく社会に示し、多くの人達と問題を共有して課題解決の方策を探ることは、研究者に課せられた使命ではないかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は、データ整理等の作業のほとんどを研究代表者・研究分担者自身で実施したため、当初予定していたよりも人件費・謝金を低く抑えて研究を進めることができ、次年度使用額が生じた。2018年度は、容量が100倍程度大きなデータ(Orbis)を扱うため、この繰越額を併せてデータ処理費として使い、データ整理・解析等を進める予定である。また、2018年度は、研究成果を、日本組織会計学会第2回全国大会(明治大学)、応用経済時系列研究会第35回研究報告会(慶應義塾大学)、23rd International Euro-Asia Research Conference、 13th World Congress of Accounting Educators and Researchers等で報告する予定であり、国内・海外出張旅費等としても執行する予定である。
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