本研究は「小規模企業の管理会計システムの設計と導入・定着メカニズムに関する研究」と題し,中小企業経営者あるいは会計担当者へのインタビュー調査を通じて,同企業群においていかにして会計に基づく管理が定着してきたのかを明らかにしてきた。特に今年度は研究最終年度ということもあり,新たに調査対象を広げるよりも,これまで行ってきた調査結果を深堀りするようなインタビュー調査を中心に行った。また,合わせて学会報告3編,研究論文4編(うち査読通過1編)を発表した。 報告については,1つは岡山県津山市に所在する中小製造企業の管理会計システムがいかに機能しているのかについてインタビューとサーベイ調査の結果を報告したものである。もう1つは同社の子会社において親会社で使われていた管理会計システムをいかに移転したのかについてインタビュー調査の結果を報告した。また,1つはイタリア・アッシジで行われた国際学会において報告を行い,以前から継続して行ってきた居酒屋チェーン店における業績管理システムについて論じた。 論文については,1編は2018年度に学会報告したものが発刊され,1編は中国に進出した中小製造企業が管理会計システムをいかに運用しているのかについて述べた。また,1編は東京に本社を置く飲食店において経営戦略の変更に伴って業績管理システムが大きく変化し,その変化を組織成員がどのように受け止めたのかについて論じた。そして最後の1編は学会報告の2編目が査読を通過したものとなる。 本年度が研究期間最終年度であったが,当初予定していた「ベンチャー企業や中小企業において管理会計システムがいかに設計され、導入が図られた後に、どのように組織成員に受容されていくのかというプロセス明らかにする」については,ベンチャー企業への調査は十分に行えなかったが,中小企業については当初の研究目的を果たせたと考えている。
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