研究課題/領域番号 |
16K04025
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
紺野 卓 日本大学, 商学部, 准教授 (50581443)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地方自治法 / 損害賠償請求権 / 監査委員 / 法的責任 / 住民監査請求 / 住民訴訟 / 4号訴訟 |
研究実績の概要 |
住民監査請求の有効性を評価するには、その後の住民訴訟の結果を分析することが最も有効であると考えるため、住民訴訟に関する裁判例の検討を行った。また地方自治法の改正に伴い、4号訴訟による損害賠償請求権等の放棄の議決を議会が行う場合、監査委員の意見が求められることに着目し、監査委員の法的責任を追及する可能性についても深度ある研究を行った。おもに左記の2つの研究により、以下のことが判明した。改正自治法では、住民訴訟に係る損害賠償又は不当利得返還の請求権その他の権利の放棄に関する議決をしようとするときは、あらかじめ監査委員の意見を聴かなければならない、ことを規定した(自治法242条10項)。同規定は、請求権放棄の議決の当否を法律上示すものではないものの、事実上、放棄の議決は違法ではないこととを実定法上明らかにしたものと理解できる。ところで同規定は、放棄の議決について、「あらかじめ監査委員の意見を聴かなければならない」としている。この意見聴取に際して、監査委員は相当の注意をもって対応すべきと考える。なぜなら、実際に違法な財務会行為等があり、同内容について監査請求が提起されたにも関わらず、監査委員が同請求を却下等したため住民訴訟まで進んだケースについて、裁判所で住民の訴えが認められたにもかかわらず、議会が損害賠償請求権等を放棄する議決を行い、また監査委員が放棄の議決に「同意」した場合には,監査委員について2重の任務懈怠があった可能性が指摘できるものであり、その法的責任追及は可能と考えるためである。研究の結果から得られた同主張は、研究論文として学内誌に投稿し掲載された(紺野卓『地方自治法4号訴訟と損害賠償請求権放棄の議決についての一考察―監査委員の責任との関係において―』商学集志87巻第2・3号合併号)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究過程で、地方自治法の改正が進行していくこととなったが、同改正内容は必然的に今回の研究には必須の要素でもあるため、自らの作業の進展という側面とは別に、改正状況を注視する必要性が発生した。左記研究開始時に想定してしない法律改正が生じたこともあり、その点で若干の遅れもあるが研究については概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに住民訴訟の裁判例の検討や、改正自治法の内容について、あるいは他法人が準拠する法律なども勘案して住民監査請求の有効性確保のための方策について研究を進めてきた。特に裁判例の検討では、4号訴訟を中心にして裁判例の検討を行ってきたが、地方公共団体内にある違法行為等の予防的統制も考慮して、今後は1号訴訟についても裁判例の検討の範囲を広げる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況で前記した様に、地方自治法の改正等の状況の確認等の影響もあり、研究の進展について若干の遅れもあるため次年度使用額が発生した。しかしながら研究に必要な支出であるため、次年度には予定通り使用することを計画している。
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